米国に留学・駐在赴任する人のためのワクチンガイド(子供編)②

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ワクチンシリーズの2回目になります。前回の記事ではこれから米国に留学・駐在赴任する方に向けて、米国における子供のワクチンの概要を簡単に記載しました。

この記事では日本と米国における小児ワクチンの違いについてワクチンごとに分けて、解説していきます。米国のワクチン情報についてはCDCのホームページを、日本のワクチンについては日本プライマリケア連合学会が提供しているこどもとおとなのワクチンサイトのホームページを参考にしていますので、そちらも参考にしてください。

繰り返しですが、この記事は2023年12月24日現在の情報に基づいています。ワクチンの適応や接種のタイミングについては、時間の経過とともに情報が古くなる可能性がありますのでご注意ください。また、記事に関しては正確な情報を記載しているつもりですが、本記事に関して、情報に誤りがあったことで生じるいかなる損失にも対応することはできません。このブログの免責事項についてもご参照ください。渡米前には、このブログの記事を参考にしつつ、かかりつけ医の先生と渡米前に必要なワクチンについてしっかりと相談することを推奨します。

米国と日本での接種スケジュールがほぼ同じであまり問題になることはないワクチン

肺炎球菌ワクチン・インフルエンザ桿菌ワクチン

日本、米国のいずれも基本的にはワクチンも2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月と2ヶ月間隔で3回打った後に12ヶ月〜15ヶ月に追加接種をして完了となります。採用されているワクチンについては2023年12月16日現在では両国間で違いがあるのですが(肺炎球菌ワクチンは米国ではより多くの血清型が含まれたワクチンが採用になっています)、接種スケジュールについては、日本と大きな差はないので、渡米の際に問題になることはほとんどありません。

B型肝炎ウィルスワクチン

日本では2ヶ月に初回のワクチンを接種し、4週間以上あけて2回目を、20週間以上あけて3回目を接種します。米国では、出生時の体重が2000g以上であれば、通常出生直後に1回目を接種します。その後は、1-2ヶ月後で2回目を、6-18ヶ月後に3回目を接種することが推奨されています。自分が米国で研修しているクリニックでは、PediarixというB型肝炎ウィルスワクチンと後で述べる4種混合ワクチンが組み合わさったワクチンを採用している都合上、通常出生直後、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月の4回で接種終了とすることが多いです(PediarixのようなCombination vaccineを利用)する場合は、合計4回の投与が認められています。通常両国ともほとんど同じタイミングで接種終了となるため、キャッチアップが必要になるケースはあまりありません。

水痘(Varicella)ワクチン

いわゆる"みずぼうそう"のワクチンです。米国ではMMRと同じで定期接種として12ヶ月-15ヶ月の間に1回目を、4歳-6歳の間に2回目を接種します。日本でも定期接種になっていて1歳以降に1回目を接種し、3ヶ月以上空けて2回目を接種することになっています。日本では早期に2回目を受けますが、米国では4歳までは2回目を接種しません。日本の方がワクチンスケジュールが早いため、通常は米国にきてからキャッチアップが必要になることはありません。

ロタウィルスワクチン

製品によって2回シリーズのものと3回シリーズのものがあります。日本では生後6週間から接種が可能で、4週間以上あけて追加の接種をしていくことになります。米国では、通常2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月(3回シリーズの場合)に接種することになります。接種スケジュールは両国で若干異なりますが、比較的乳児期の早い時期に接種を終了しますので、このワクチンも渡米の際に問題になることは通常ありません。

米国でキャッチアップが必要になる可能性が高いワクチン

MMR(麻疹、風疹、ムンプス)ワクチン

MMRとは麻疹(Measles)、ムンプス(Mumps)そして風疹(Rubella)の3つのウィルスのことです。アメリカではこれらのウィルスに対するワクチンが一つにまとまっており、MMRと呼ばれています。米国では定期接種として、12ヶ月-15ヶ月の間に1回目を、4歳-6歳の間に2回目のMMRを接種することになります。日本だとMR(麻疹・風疹)のワクチンが定期接種としてカバーされていて、1歳-2歳の間に1回目を、小学校に入る1年前(年長相当、5歳あるいは6歳)で2回目を打つことになります。日本ではムンプスは別のワクチンに分かれていて、任意接種(自己負担)となっています。米国と日本のワクチンのスケジュールを比較した際、麻疹と風疹ついては、1回目のタイミングは同じなのですが、2回目のタイミングについては米国の方が少し早くなります。なので、例えば4歳や5歳で日本から渡米した際には米国でキャッチアップが必要になることがあります。

4種混合ワクチン

4種混合ワクチンとはジフテリア(Diphtheria)、破傷風(Tetanus)、百日咳(Pertusis)そしてポリオ(Polio)の4種類のウィルス、細菌への成分が入ったワクチンのことです。日本で採用されているDTP-IPV (ジフテリア, 破傷風, 百日咳、不活化ポリオ)は2023年4月から接種スケジュールが前倒しになり、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザ桿菌ワクチンと一緒に2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月でと3回接種したのち、6ヶ月以上空けて(なので通常1歳を過ぎたタイミングで)、4回目を接種することになっています。このように4回接種した後は、11歳で追加で2種混合ワクチン、DT (ジフテリア、破傷風)を打って接種完了となります。一方で米国では、3種混合(DTaPといってカバーされている菌/ウィルスは同じですが、若干成分の異なるワクチン)とポリオワクチンを日本と同じく、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月に接種しますが、4回目の接種は通常15-18ヶ月に行います。(日本より打ち始める年齢が約3ヶ月遅いことになります)。さらに4歳で追加の3種混合とポリオワクチンの接種が必要になります。この4歳以降のDTaPとポリオについては、4歳以降に渡米されるお子さんで日本のワクチンスケジュールに則っていた場合は米国でキャッチアップが必要になります。

HPVワクチン

HPVワクチンの接種は、子宮頸がんの発生を半分以下に大きく減少させることが知られていますが、日本では、メディアの偏った報道などもあり、積極的接種勧奨が中止され、日本では接種率がとても低くなってしまったワクチンです。2022年4月から個別勧奨が再開になり、日本では定期接種として小学校6年生から高校1年生の女子に推奨されています。米国では9歳から接種が可能ですが、通常は11-12歳で接種を開始します。15歳未満で接種を開始した場合は2回接種、15歳以降に接種を開始した場合は3回接種が推奨されています。また、米国では、女子だけではなく男子にも推奨されている点は大きな違いです。なので例えば10歳代の男子を連れて渡米する場合は、米国では定期接種としてHPVワクチンを受けることができるので、かかりつけ医との相談が必要です。たとえ接種時期が大きく過ぎていたとしても接種が可能なので、やはりかかりつけ医への相談をおすすめします。

髄膜炎菌ワクチン

日本では2歳以上で任意接種として接種が可能ですが、寮生活などの特別な環境を除いて推奨されることはほとんどないのではないかと思います。米国では定期接種として11-12歳で1回目を16歳で2回目を接種することになっています。11歳以上18歳未満で渡米してきた場合は米国でキャッチアップが必要となります。

日本では定期接種であるが、米国では接種しないワクチン

BCG

BCGは結核菌のワクチンになります。日本では定期接種として、生後5-8ヶ月に接種されることが多いですが、アメリカではBCGは定期接種ではありません。注意しないといけない点としては、米国では結核に過去に暴露されたことがあるかどうかの指標として、ツベルクリン反応(米国ではPPDと呼ばれます)という検査を用いることがあり、医療従事者や学校などで働く場合にはこの検査を求められることがあります。これは微量の結核に入っている成分を注射することでその反応をみる検査で、これまで結核に暴露されていない場合は、ほとんど注射された部分の皮膚が腫れないのですが、もし過去にBCGを接種されていた場合は、PPDが陽性になってしまうことがあります。その場合には結核の追加検査として、血液検査や胸部X線の検査が必要になることがあります。

日本脳炎

日本では定期接種として、3-7歳で1-3回目を接種したのち、9-13歳で4回目を接種することになっていますが、米国では推奨されていません。日本から渡米される場合は、任意接種としてなら6ヶ月から接種が可能になるため、もし渡米前に日本脳炎ワクチンを完了させたい場合には、お金はかかりますが、前もって打つことは可能です。うちの子供も渡米時には3歳だったのですが、日本脳炎の1-3回目は済ませてから渡米しました。

以上、それぞれのワクチンについて、米国と日本での接種時期のタイミングについて言及しながら、米国と日本での接種スケジュールがほぼ同じであまり問題になることはないワクチン、米国でキャッチアップが必要になる可能性が高いワクチンそして日本では定期接種であるが、米国では接種しないワクチンの3つに分けて記載してみました。あまり、ニーズは多くはないと思うのですが、米国留学の準備に役立つことを祈っています。繰り返しですが、詳細については必ずかかりつけ医へ相談していただくようにお願いします。

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