米国に留学・駐在赴任する人のためのワクチンガイド(子供編)①

更新日:

日本から来られた患者さんから受ける質問の中で、最も多い質問が子供のワクチンに関するものです。日本から米国に引っ越してきた後、子供が現地の学校に通うためには、特定のワクチン接種が必須となっていることが多いです。今回は家族連れで米国に留学・駐在赴任する人のために、子供のワクチンについての情報を2回に分けて記載していきます。今回の記事では子供のワクチンについての大枠を記載しています。個々のワクチンについては別記事で解説しています。

この記事は2023年12月8日現在の情報に基づいています。ワクチンの適応や接種のタイミングについては、時間の経過とともに情報が古くなる可能性がありますのでご注意ください。また、記事に関しては正確な情報を記載しているつもりですが、本記事に関して、情報に誤りがあったことで生じるいかなる損失にも対応することはできません。このブログの免責事項についてもご参照ください。渡米前には、このブログの記事を参考にしつつ、かかりつけ医の先生と渡米前に必要なワクチンについてしっかりと相談することを推奨します。

そもそもワクチンとは?

ワクチンとは、病気の原因になる病原体の毒素の病原性や毒性を弱くしたり無くしたりしたものです。ワクチンを受けることで、その病気に対する免疫が、体の中につくられ、いざ本当の病原体が体の中に侵入してきた時に、感染症の発症あるいは重症化を予防することができます。日本ではワクチンは定期接種(公費で自己負担なく接種可能)と任意接種(自己負担が必要)に分かれています。

米国におけるワクチンの考え方

米国では予防医療の一環として、ワクチン接種が重要視されています。例えば、米国の小児科学会のホームページでは、子供へのワクチン接種を拒否する親に対して、医療従事者が親がワクチンを打たないリスクを理解した上でそのような決断をしたことを記録に残すため、書類のテンプレートが提供されています。その書類上では、例えば、I know that failure to follow the recommendations about vaccination may endanger the health or life of my child and others with whom my child might come into contact. といった説明があり、このような記載を読んだ上で、親が書類に同意のサインをするようになっています。このような書類は自分が研修するクリニックでは必須というわけではないのですが、実際に一定数の同僚や上司は、子供へのワクチンを拒否する親に出会った際にこのような書類を残すように努力しています。日本から渡米してきて初めてこの書類をみた際には、ここまで記載をしないといけないのか、少し驚いたことを覚えています。

学校に入るためのワクチンの要件を調べよう

ワクチンの要件はその地域によって異なります。もう転入する学校が決まっているのであれば、その地域のホームページを見て必要なワクチンの要件について調べてみたらいいのではないかと思います!例えば仮にニューヨークに引っ越す予定だとして、NewYork immunization Public SchoolなどとGoogleで検索するとワクチンについての記載があるホームページを見つけることができます。

一例ですが、このホームページでは"New York State Public Health Law requires students to get certain vaccines in order to attend child care or school. (ニューヨーク州では、法律によって学生が通学するために特定のワクチンを接種することを必要としている)"という記載があった上で、例えば5歳以下の場合、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザ桿菌ワクチンそしてインフルエンザの予防接種が必要であることが記載されています。自分が現在住む地域では、渡米してから学校に通い始めてから、接種するでも問題はなかったりするのですが、地域によっては通学の手続きのためにワクチンの証明書が必要になる、ということもあり得るかもしれません。

いつでも保険が重要!

予防医療の受診の記事でも解説したのですが、米国のスタンダードな医療保険ではワクチンは予防医療の一部であり、小児患者に推奨されるスタンダードなワクチンは通常費用は全額カバーされます(もちろん例外はあると思います)。一方で、日本から保険を持って来られた方で一般的に駐在員向けの保険やクレジットカードの付帯保険をお持ちの場合、ワクチンの費用はカバーされないことも多いので注意が必要と思います。

もし、ワクチンをカバーする保険を持たない状態で、米国でワクチンを打ちたい場合、米国では低所得者や無保険者のためのさまざまなプログラムや補助も存在するので何かしらのサポートを利用することができるかもしれません。自分が勤務する地域では、自治体が運営するワクチンクリニックが無償でワクチンを提供しているため、小児のワクチンについてそこで無料で接種することが可能です。接種してもらうようにお願いしています。もちろん、地域によって利用できるリソースは違うので、最終的には現地のかかりつけ医に確認することをお勧めします。駐在で受診される方は、たとえワクチンの費用が保険でカバーされなかったとしても、会社が支払いをするため自己負担する必要がないため、ワクチンを打ってしまってください、という患者さんもいらっしゃいます。

以上、この記事では米国に留学・駐在赴任する人のための子供のワクチンについて大枠を説明してみました。次のページでは、それぞれのワクチンについて、米国と日本の違いを踏まえながら説明してみたいと思います。

-臨床留学

Copyright© 自分のあたまで考える , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.