予防医療(ヘルスメンテナンス)のアプリを更新しました。

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滋賀家庭医療学センターの支援いただきながら管理している予防医療(ヘルスメンテナンス)のウェブアプリケーションをかなり久しぶりに更新しました。しばらく使っていないとGithubもGoogle App Engineも仕様が色々と変わってしまい、勘を取り戻すのに時間を要しました。

アプリ作成までの経緯については過去の記事をご参照ください。

今回の更新では、2023年5月に公開されたUSPSTFの乳癌のDraft Recommendationを盛り込んだのと、2023年6月に新たに追加された不安症(Anxiety)についての推奨を追加しました。乳癌について、USPSTFは検診の開始年齢を50歳から40歳に引き下げるDraft Recommendationを出しています。日本ではもともと公費での検診が40歳から開始となっているため、40歳からマンモグラムを受けている患者が多いと思うので、実際の臨床自体はあまり変わらないのではないかと思います。そもそもこの領域は、各専門団体(ACOG, ACR, NCCNなど)が以前からより若年からのスクリーニングを推奨する一方で、保守的なUSPSTFは50歳からという推奨を維持し、プライマリケアの学術団体(AAFPとACP)もそれを支持するという状況だったのですが、おそらくはAAFPとACPもUSPSTFのDraft RecommendationがFinalizeされれば、その推奨に追随するでしょう。

このウェブアプリーケーションですが、2020年9月に公開してから約3年が経過しました。当初はある程度のアクセスがあったのですが、ここ最近は1日10件くらいのアクセスに留まっています。もう少し多くの人に利用して欲しいと思っているのですが、もう少し宣伝の方も頑張っていかないといけません。

このアプリはプライマリケアの現場で働く医師のために作られています。かかりつけ医として、ひとりひとりの患者に対して、その患者の背景に応じた適切な予防医療(ヘルスメンテナンス)を提案することはとても大切です。このアプリを用いることで"漏れなく"その患者に必要な予防医療(ヘルスメンテナンス)を確認することができます。また論拠となるリソースや、患者の金銭面の負担など(地域によって多少の差は出ます)についても言及しているため、患者への説明にも使えます。これまであまり予防医療(ヘルスメンテナンス)について勉強する機会のなかった先生(特に臓器専門医から急に開業された先生)や、現場でトレーニングの研修医の先生などには特に役に立つのではないかと思います。

理想を言うと、このような予防医療のリマインド機能は、電子カルテにビルトインされていることが望ましいです。自分が所属するプログラムで使用している電子カルテシステムでは、患者の情報に応じて、未実施の予防医療の項目が画面上でリマインドされるようになっています。カルテにリマインド機能がビルトインされていれば、電子カルテ外でアプリを使う必要性がありません。実際、USPSTFが同じ機能のモバイルアプリを提供している(自分はこのアプリを真似して日本バージョンとしてこのアプリを作りました)のですが、米国に来てからこのUSPSTFのアプリを使っている医師をみたことがありません。繰り返しですが、カルテがリマインドしてくれるので、同じ機能を持ったアプリは不要なのです。より詳しい情報が必要であれば、ホームページを見るので、アプリは使わないのです。

日本でも予防医療のリマインド機能がビルトインされた電子カルテが登場するといいなと思うのですが、日本ではそもそも予防医療に対するインセンティブがないので、このような機能は重視されないのかもしれません。例えば、自分が所属するグループでは、自分がかかりつけ医として登録されている患者の、大腸癌の検診完遂率などが数字として可視化され、実際に診療の評価基準として使われています。日本では、自分の患者が大腸癌の検診を受けていようがいまいが、あまり収入には関わらないし、メリットもないので、チェックしようとは思わないという側面もあるかもしれません。

自分は全く詳しくはないのですが、日本では開業医向けに非常に多くの企業が、多彩な電子カルテシステムを提供していると思うので、予防医療のリマインド機能を搭載した電子カルテを提供する尖った企業が一つくらい出てきてもいい気もするのですが、どうなのでしょう、、、。

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