レジデントのワークライフバランス

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2023年です。気づけば渡米してから1年半が経過しました。3年間のレジデンシートレーニングのちょうど半分まできたことになります。2022年はしばらく米国と日本で離れて暮らしていた家族を米国に連れてきて、"家族として"米国で新しい生活を開始した大きな変化の年でした。仕事だけではなく、家事や子供の学校のこと、家族の病院の受診のこと、子供の勉強の世話をしたり、色々な請求書の処理、保険の契約、労働許可証や免許証の手続きなど、常に何かに追われ続けていました。生き抜くので精一杯で、振り返りを行う機会もほとんどありませんでした。やらなければいけないけど、終わっていないタスクが、自分の脳の限られたメモリを占め続けることで、その場のパフォーマンスに影響が出たり、フリーの時間が取れてもなかなか気を緩めることができなかったりすることもありました。負の連鎖から抜け出せるように、仕事や家事の効率化について考え始め、少しずつ取り組み始めたところで2022年が終わりました。この効率化の作業を突き詰めていくことが、2023年度の大きな課題になりそうです。さて、今回のブログ記事では、『なんでこんなに忙しいんだろう』という自分の疑問と向き合うために、家庭医療レジデントとして働く自分のライフワークバランスについて少し振り返ってみたいと思います。

米国は仕事のメリハリがはっきりしていてオフの時間が多く取れる?

日常業務に関して言えば、オフの時間が多いように感じることはありません。確かに、米国での業務は朝が早いものの、夕方は6-8時頃にはサインアウト(申し送り)を行い、サインアウトが終わった10秒後にはみんなリュックを背負って速やかに帰宅します。日本にいた時のように夜の10時とか11時まで、病院でカンファレンスをすることはあまりないです。しかし、外来のカルテの記載や、前回の記事で書いたようなインボックス(患者からの質問やRefilの依頼)の対応などは業務時間内に終わらないことも多く、サインアウト後に残業して片付けないといけないこともしばしばです。ここで注意しないといけないことは、米国では基本的に自宅で自分のパソコンから電子カルテにアクセスすることができるので、ほとんどの人が自宅に帰ってからそのような残業をこなすということです。職場に残って仕事をしていた場合は、多くの同僚が"What can I do for you so that you can go home?"と声をかけてくるでしょうし、あまり繰り返す場合には、要領が悪いという印象を与える可能性が高いと思います。なので、一見みんな仕事が終わったすぐに帰宅し、その姿は爽やかに見えるかもしれないのですが、彼らだって帰宅後にまたカルテとにらめっこしているのです。自分は家ではなかなか仕事が捗らないタイプで、なるべく職場で仕事を終わらせて自宅に帰りたいタイプなので、職場で残って仕事を仕上げづらい雰囲気を辛く感じることもあります。

米国では勤務時間の制限が決まっているので日本のような長時間労働は起こらない?

これも時々聞く言説だと思いますが、やはり真実ではないように思います。ACGME(アメリカの研修を管理する組織です)は、週の労働時間が80時間以内であること(4週間で320時間以内であればOK)、連続勤務が28時間以内であること、週に1日以上の休みがあること(4週間で4日あればOK)を規定していますが、これは決して優しくはありません。例えば、週に80時間を6日で割ると1日13時間働くことができます。月曜日から土曜日まで、朝7時から夜の8時まで働き続けることができます。実際には4週間で320時間以下であればいいので、平日は朝7時から夜8時まで働き、週末は土曜日の朝から日曜日の朝まで24時間のシフトをこなしたりします。この場合、日曜日は回復で精一杯だったりして、結局1週間仕事以外は何もできず、ほとんど日本で勤務していた時と変わらないと感じることも多いです。3年間のトレーニングのうち1年目と2年目は基本的には週に6日の勤務です。厳しいローテーションの場合はそのローテーションする科でのデフォルトが週に6日になっていますし、緩いローテーションの場合は通常土日のどちらかは家庭医療の入院患者のサービスをカバーするからです。3年目になると週末のカバーが急に少なくなるので、負担が大分楽になるようなのですが、1年目から2年目ではほとんど変化は感じませんでした。3年目になり、週末に時間が取れるようになるのが待ち遠しいです。

それでも年に4週間の休暇が取れる!

それでも年に4週間(通常は1週間×4回)の休暇が取れるのは素晴らしいと思います。日本の多くの病院では夏休みという名目で、年の1回1週間の休暇が与えられることが多いと思いますが、米国に来てからは年に1週間の休暇なんて少なすぎてあり得ない、と少し考え方が変わってしまいました。自分も今年度は既に2週間休暇をとっていますが、ナイアガラの滝を見にいったり、ワシントンDCのスミソニアン博物館に行ったりと家族と旅行を楽しむことができました。休暇の長さという点では圧倒的に米国に分があるので、米国で働く日本人医師が帰国をためらってしまう理由の一つになっていると思います。

以上、米国での勤務時間事情について記載してみました。また、時間を見つけて研修の情報をどんどんアップしていきたいと思います:)

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