初めてのナイトフロートが終わりました。

投稿日:

米国で家庭医療研修を開始してから初めての病棟のナイトフロート勤務が終わりました。2週間の間、週末の1日の休みを除いて、19時〜7時で働き続けました。自分が研修するプログラムでは、2週間(1ブロック)のナイトフロート勤務がレジデント1年目の間は3回あります。1年間のうちの1ヶ月半は昼夜逆転の生活を過ごすことになるわけです。そもそもはレジデンシー教育を管理するAccreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)が2003年にレジデントの勤務時間の上限を80時間に定めたことがきっかけで、労働時間を短縮させる方法として、導入が進んだようです。体力的には非常にきつかったですが、救急外来から病棟に患者を入院させる経験を多く積むことができ、指導医とのコミュニケーションの取り方や入院オーダーの出し方については大分慣れたような気がします。

ナイトフロートの業務内容

家庭医療科は自分たちのクリニックで見ている患者と、契約しているコミュニティークリニックの患者が入院した際には、主治医として病棟で患者を見ることになります。ナイトフロートの仕事は、19時にデイチームから申し送りを受け、夜間の病棟患者の検査結果のフォローアップや様々なコールに対応しつつ、救急外来から入院患者の依頼が来れば、診察し入院の指示出しをすることです。基本的に全ての患者は救急外来を介して入院してくれるので、ファーストタッチは基本的には救急外来の先生が行ってくれます。

自分が研修するプログラムはPGY1とPGY2が二人で勤務し、基本的にはPGY2がPGY1を監督しながら、適宜仕事を分担して働くことになります。フォローアップで一番多いのは、血液検査や画像検査の結果の確認です。例えば、胸痛で来た患者の心筋逸脱酵素のフォローアップや敗血症患者のLactateのフォローなどです。フロアコールで一番多いのはやはり、薬剤投与についての相談です。痛みが強くて、薬を欲しがっているとか、吐き気があって薬が欲しい、などです。数は多くないですが、呼吸状態の悪化などの急変や、Against Medical Adivce(AMA)といって、夜間に急に自宅に帰ると言い出す患者の対応なども含まれます。

指導医は自宅待機してくれているのですが、夜間への指導医への報告は義務ではありません。なので、複雑や重症な症例であれば、指導医に相談するのですが、比較的軽症の症例や、やることがほぼ決まっているような症例であれば、自分たちだけでマネジメントし、翌朝指導医に報告する、ということになります。指導医が実際に病棟にいなくてもなんとかなるのは、救急外来とICUに指導医クラスの医師がいるからです。基本的には救急外来の医師がある程度、入院後の方針を提示してくれますし、もし患者の状態が悪くなった場合は、ICU医師をコールすることが可能なので、必ずしも家庭医療科の指導医が病棟にいなくても大丈夫なようになっています。一つのシフトにつき、MAXの入院は7人までと決まっていて、もしそれを超える入院依頼がある場合は、他のチームが臨時で対応することになっています。実際に自分の勤務では3-5人の入院患者を引き受けていましたが、毎回病歴をとって、診察して、指示出しをして、とやっていると全く時間がなく、夜はほとんど仮眠をとることはできませんでした。

日本との違い・・・

日本では、救急外来や病棟当番として、月に何回か病棟に泊まることはありましたが、このように夜勤だけを2週間やり続けることは初めての経験でした。米国では内科や家庭医療のレジデントは皆このようなナイトフロートを経験することになります。日本ではこのようなスタイルは一般的ではないと思うのですが、色々な記事を見ていると沖縄中部病院や手稲渓仁会病院病院では、このようなシフトがあるみたいです。

ナイトフロートシステムの論文では、ストレスや疲労が少ないのでは(Chronobiol Int. 2002;19(5):893–902. Curr Surg. Sep-Oct 2004;61(5):445-51.)というデータがあるようです。この2週間は確かに大変だったのですが、確かに長い目で見れば、夜勤が散在しているよりは体に優しく、研修にもフォーカスしやすくなるのかもしれません。もちろん、上であげた記事にも書いてある通り、研修医の人数が多く、患者数もある程度High Volumeな施設でないとスケジュール管理や夜勤研修の質の担保という観点で、導入は難しいような気はしますが、、、。

週末の2日間で体内時計をリセットし、月曜日からはまた日中の勤務が開始となります。また気持ちを切り替えて頑張ります!

-未分類, 臨床留学

Copyright© 自分のあたまで考える , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.