臨床留学での英語の壁

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前回の記事で渡米後3ヶ月時点での自分の英語力の現状のことや、Speech Pathologisによる英語の個別レッスンについて記載したのですが、Inpatientの忙しいローテションの中で発信の機会を失っていました。婦人科ローテーションに入り、時間に余裕ができたので、また少しずつ発信を再開したいと思います。

Speech Pathologistとのレッスン

プログラムの支援があり、合計で10時間(1時間 x 10回)のコースを受講させてもらっている(本当に面倒を見てくれるプログラムには感謝の気持ちしかありません)のですが、実際のレッスンではまず最初の一時間で以下の12項目について評価を受けて、自分の苦手な部分を直していくという流れです。

  1. Loudness/Projection
  2. Pitch (habitual)
  3. Vocal Quality
  4. Resonance
  5. Expressive Intonation/Inflection
  6. Pronunciation/Diction
  7. Rhythm/Pausing
  8. Rate of Speech
  9. Grammar
  10. Vocabulary/Word Choice
  11. Conciseness of Speech
  12. Nonverbal: Facial/Gestural

自分の場合はこの中でも12. Vocabulary/Word Choiceの評価が低く、他のコンポーネントについてはまずまずの評価でした。

やはり語彙力が一番の問題・・・

やはり、意味を知らない単語が出てくると、一生懸命推測を試みるのですが、その間に会話の内容から気が逸れてしまったり、タイムラグが生じることで会話についていけなくなることは多いです。実際にこのような評価を受けて思うのですが、ネイティブの語彙力と自分の語彙力には非常に大きな差があります。いざアメリカで暮らしてみると、本当に知らない単語にほぼ毎日出会います。フォーマルな場での難しい単語から、日常生活で使うスラングのような言葉まで毎日メモをしまくっているのですが、キリがありません。ちゃんとしたソースではありませんが、少しググって調べてみた限りでは、ネイティブが使用する単語数は通常20.000-30,000語のようです。非ネイティブである程度流暢に会話ができる人はだいたい10,000-20,000語の間に収束するようです。自分は果たしてどれくらいの語彙力を持っているのだろう・・・。10,000は超えていると思うのですが、よく分かりません。

これは友人の子供(小学校4年生)が通っている小学校の宿題なのですが、驚きました。自分でも分からない単語が紛れています。小学校4年生でこのレベルの単語を勉強しているのだから、そりゃあ自分の語彙力に限界はあるよなー、と妙に納得してしまいました。

どのように語彙力を向上させるか?

これは、先生とも相談したのですが、やはりひたすら覚えるしかありません。笑 単語についてはテレビドラマやAudibleなどからどんどん知らない単語を拾ってひたすら覚えていく。また、医療現場や日常会話で使うイディオムの教科書があるようで、それを紹介してもらい、単語だけではなく、イディオムもどんどん覚えていくように言われました。これって別に今までもずっとやってきたことなので、余りこれまでの勉強法を大きく変える必要はないです。結局、良い先生にかかったからと言って、魔法の勉強法などはなくて、地道に努力するしかないということです。でもこうやって『今までやってきたことを継続して少しずつ良くなるのを待つしかない』とプロに言ってもらえることで、自分も信じてやり続けることができるし、周囲にもプロの教えに従って正しい努力をしていると主張できるので、そういう意味では心強いです。また、分からない英単語やイディオムを覚える時には、必ず英英辞書を使うように指導されました。自分が早めのピッチで一定量以上の情報を与えられた時に、会話についていけなくなる理由として、会話中に頭の中で英語を日本語に翻訳している可能性を指摘されました。これは、実際に先生が読み上げる速読文の理解力テストをした時に、自分が日本語でメモを取ったことで判明しました。英語は英語のまま理解する、文脈の中で理解することを心がける。これも言うのは簡単なのですが、実際に行うのは大変です。でもやり続けるしかありません。

英語が下手というフィードバック・・・

英語が下手なのは、誰もが分かっている既知の事実です。これは一般的な日本人である限りどうしようもありません。なので、自分は臨床の現場では、その英語力を考慮した上で『コミュニケーションをしっかりとって大きなミスをせず、職場でFunctionすること』を意識して行動しています。なので、自分の英語力がどのように現場で自分がFunctionする際の障害になりうるか、そこで生じる障害をどのようにカバーすることができるか、ということを常に考えて動いています。特に大きな方針やその日出すべきオーダーをしっかりと指導医とシニアレジデントとダブルチェックして、正確に完了することには最大限の注意を払っています。なのでただ単に『英語で苦労している』みたいなフィードバックをもらった時には、それを真摯に受けともつつも、『それはもう分かっているよ』と思ってしまいます。どのような場面で支障が出ているのか、どのように具体的に改善しうるのかが分からないと、そのフィードバックにはあまり意味がないと思うのです。日本人が米国で臨床医として働く際には、こういった意見については、素直に受け止めつつ、ある程度スルーしていく強い気持ちも必要なのだと思います。全ての意見に耳を向けて落ち込んでいると心が潰れてしまうし、正しい努力ができていると信じているのであれば、『そこはある程度仕方ないよね』と、開き直る気持ちだって少しはあっていいと思うのです。

悩みを共有することの意味

他のプログラムで同様にこの夏から働き始めた先生と時々コミュニケーションをとるのですが、やはり英語にはみんな苦しんでいます。自分はそういった同期と現状をシェアして、悩みを共有することには意味があると思います。英語を母語としない、日本人医師の場合、みんなある程度似たり寄ったりの英語力で渡米してくると思うので、英語の成長曲線も多少近似すると思います。似たような境遇で頑張る仲間と苦労を共有することで、自分だけではないのだ、と気持ちも楽になります。一方で、そのような情報は普通はオープンにはなりません。ほとんどの日本人医師が英語では非常に苦労しているはずですが、そう言った体験談や苦悩は多くの場合記録には残されていないように思います。理由はいくつかあると思うのですが、一番大きな理由としては、英語で苦労していると告白することが自分のマイナス評価につながってしまう可能性があるからだと思います。自分の失敗談や弱みを他人に開示することは、なかなか実際には勇気がいるし、難しいです。

とあるプログラムでは、上司から『日本人は英語が下手なのはわかっているから』や『言語がすらすら話せることよりも発言の内容や勤務態度の方が重要である』と言われたという話を聞きましたが、自分の場合はそのような甘い言葉で気持ちを緩める機会は一切ありません。常に緊張感と危機感を持ち、時には気持ちが参らないように適宜休憩をとりつつ、継続し続けるしかないのです。いつかブレークスルーできる時が来ると信じて、頑張り続けるしかない苦しい時期です。でもきっと乗り越えることができると信じています。

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