インディアナ州で家庭医として働き始めました

投稿日:

家庭医としてインディアナ州で働き始めて約2ヶ月が経過しました。仕事にも大分慣れてきて、周囲の医療リソースも少しずつ把握できてきました。レジデンシーは卒業したのですが、実際に働いてみると家庭医としてまだまだ未熟だと感じることばかりで、日々勉強の毎日です。今回の記事では、新しい環境の紹介と、2ヶ月間働いてみて感じたことをシェアしたいと思います。

FQHCについて

自分は現在FQHCと呼ばれるクリニックで働いています。FQHCとはFederally Qualified Health Centerの略なのですが、簡単にいうと政府から補助を受けて、医療アクセスの乏しい地域や、経済的な理由から医療アクセスが難しい人々に医療を提供するクリニックです。Sliding scale feeというシステムがあり、その人の収入によって、支払い金額が決定されるのですが、収入がほとんどない人は非常に安い金額で必要な医療を受けることができます。クリニックに訪れる患者層はMedicareやMedicaidの患者が最多で、60-70%程度を占めているように思います。残りはPrivate insuranceの患者と無保険の患者です。無保険の患者の中には、メキシコから移民としてやってきたばかりの患者も多いです。自分は全くスペイン語は話せないので、通訳に頼っているのですが、スペイン語の勉強も始めようと思っています。スペイン語で診療できるようになるとは思いませんが、少しでも話すことができれば、患者さんに安心を与えられるのではないかと思っています。(日本人がアメリカでカタコトでも日本語を聞くとホッとする感覚があると思うのですが、きっと自分が少しでもスペイン語を話すことにも何か意味があるのではないかと思っています)。とても厳しい環境で暮らしている患者も多いので、なんとか少しでも力になれるように、毎日一生懸命働いています。アメリカの医療は非常に高額なので、色々と健康問題を抱えながら生きていくのは簡単なことではない、と日々感じています。

仕事のスケジュールについて

仕事は原則、午前8時から午後5時まで外来患者のみの診療を行っています。水曜日にはAdmin timeとして溜まったカルテや書類を整理する時間をもらっています。木曜日は夕診もあるので午後6時まで診療しています。診療の範囲は小児、一般成人、婦人科を見ていますが、産科診療は行っていません。また、手技についても現在は行っていません。患者のためにも職場と相談しながら、少しずつ手技は開始していきたいと思っているのですが、まだ開始できていません。入院患者は一切診ていません。自分は入院患者診療は外来患者診療と比べると大変だと思います。重症な患者を診る機会が多く、緊急の対応もあるからです。場合によっては難しい決断を迫られたり、非常に厳しい会話を患者とその家族にしないといけない場合もあります。外来でも色々問題は起こるのですが、何かあった時に救急外来に行ってね、ということができるので、言い方は悪いですが、逃げ道が残されているような感覚があります。現在は少しずつ患者の数が増えてきて、1日平均20人くらいを診ています。水曜日がAdmin timeとしてプロテクトされているのですが、溜まったカルテの処理をしたり、患者の質問に返答したり、書類にサインをしたりしているとあっという間に終わってしまいます。それでも、レジデントだった時と比べると格段に自分や家族のための時間は取れていると思います。レジデント時代の2-4週間毎に新しい環境に飛び込まないといけないストレスと、入院患者の診療がなくなったことで負担が減ったのだと思います。

電子カルテについて

これは日本でも同じかもしれないのですが、職場を変える時に一番大変なことは電子カルテへの適応です。レジデンシー時代は、Epic(エピック)とCerner(サーナー)と呼ばれる電子カルテシステムを使っていました(この2つが米国ではよく使われているようです)が、新しい職場ではE-Clinicαl Work(ECW)と呼ばれる電子カルテシステムを使っています。やはり、使い方は大きく異なっているので、薬を一つ処方するのも最初は一苦労でしたが、最近になりようやくカルテの使い方で困ることがなくなってきました。日本と比較して米国では、1回の外来で議論する健康問題の数が多く、患者もどんどん質問してくるので、外来の時間はいつも切迫します。また、実際の診療以外には患者からのメッセージの対応や、Refillへの対応などの電子カルテ上での事務仕事も多いです。なので、電子カルテを効率良く使いこなすことが、特に多くの患者を短時間で診ないといけないプライマリケアの現場では重要になってきます。

州による医療の違い

日本では県によって法律は変わりませんが、アメリカでは州によって法律が大きく異なります。一番気を遣ったのはControlled substanceと呼ばれる、政府や州によって管理されている薬物の処方です。大枠は一緒なのですが、州によってこのクラス分けが微妙に異なったりします。また、以前働いていたペンシルベニアでは医療用マリファナは合法でしたが、インディアナ州では違法です。また、大きな違いでいくと、ペンシルベニア州では人口中絶や合法でしたが、インディアナ州では違法です(中絶を望む患者はシカゴ-イリノイ州に行くようです)。こういった法律の違いは万が一ミスを犯すと非常に大きな問題になるので、非常に気を使います。特に初めの1ヶ月間はしつこいほど上司に何度も確認しました。

以上、自分がインディアナで家庭医として働き始めた環境と、その感想についてまとめてみました。また、少しずつブログを更新していきたいと思います。

-未分類

Copyright© 自分のあたまで考える , 2025 All Rights Reserved Powered by STINGER.