J1 waiverのタイムライン(とある米国家庭医の例)

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6月にレジデンシーを修了し、日本に一旦帰国していましたが、新しい仕事のため、先日アメリカのインディアナ州に戻ってきました。今週から家庭医として勤務を開始しています。現在はまだオリエンテーション中なので、ゆっくりとした日々ですが、すぐに実際の診療が開始になるので、スタートでつまづくことのないように気を引き締めていきたいと思っています。

自分はJ1ビザで米国で家庭医療の研修を修了した後、本来であれば2年間自国に帰国しないといけないルール(2年間ルール)をWaiverして(これをJ1 waiverと言います)、ビザをH1bビザに切り替えて働いているのですが、今回の記事では、実際に自分が経験したJ1 waiverのタイムラインについて紹介していきたいと思います。J1 waiverについての情報の需要はとても少ないとは思うのですが、とはいえオンライン上にはほとんど情報がなく、自分はかなり苦労したため、このように情報を共有することで、どなたかの役に立てばと思っています。

前提の情報

J1 waiverには実際にいくつか方法があります。自分の場合は、担当してくれた移民弁護士(Attorney)の指示に従いHHS waiverという方法を取りましたが、Conrad 30という方法が一般的にはより知られています。Conrad 30は各州で毎年30人を上限として、医療過疎地で働く外国人医師に対して先に述べた2年間ルールのWaiverを認めるというものです。

一方でHHS waiverの場合はConrad 30のような定員が存在しない点で有利であると言えます。しかし、自分も詳しくは理解していないのですが、説明には"mental health or primary careに従事する必要がある"と記載されているので、Specialistの場合はこの方法をとることはできないのだと思います。(https://www.hhs.gov/about/agencies/oga/about-oga/what-we-do/exchange-visitor-program/index.html)

Conrad 30の場合、多くの州で毎年9月1日から申請の受付が開始となっています (https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/students-and-exchange-visitors/conrad-30-waiver-program)。また、Conrad 30は原則First come, First Serve (早い者勝ち)ということを知っていたので、自分の場合は、もしConrad 30を申請する場合に9月1日には書類を提出できるよう、7月中には契約書(Contract)にサインをすることを目標(自分の場合は2024年の7月からJ1 waiverをしたいので、2023年の7月となります)に、就職活動を開始しました。

実際のタイムライン

それでは実際のタイムラインを共有していきます。

2022年10月頃:少しずつJ1 waiverについての情報を拾い始めました。インターネットでJ1 waiverが必要な医師をリクルートしている雇用主を探したり、過去にウェイバーをした先輩の話を聞いたりといった活動を始めました。ただし、この段階ではどこも2023年度の採用を詰めている状況なので、ほとんどの雇用主からは"2023年度の採用も決まっていないのに、2024年度の採用の話はできない"、というレスポンスが返ってくると思います。この時点ではあまり具体的な話はまだ進めることができない、ということは理解しておく必要があると思います。

2022年12月6日:自分がレジデントとして働いている雇用主の異なるLocationで、インタビューを受けました。内部で情報が回ってきたのではなく、普通にオンラインで検索し、情報を発見したので、内部のEmailで人事担当者に質問をしてみると、2024年度採用でもインタビューが可能とのことだったので、受けてみることにしました。地域自体は、自分も妻もとても気に入ったのですが、非常に労働条件が厳しい(RVUが高い)ことがネックであったため、即決はせずに時間をとってもう少し職を探してみることにしました。

2022年1月-3月:主にオンラインでの検索と、知り合い(過去にJ1 waiverを経験した米国人、日本人医師)のつてを辿って、複数の雇用主にJ1 waiverが必要な医師を採用が可能かコンタクトを取りましたが、話はうまく進みませんでした。多くの場合はメールでまずはコンタクトを取った後、電話、オンライン(ZoomやTeamsなど)で簡単な面接を行い、その後で実際にオンサイトでのインタビューを受けることになると思います。米国は広いのでオンサイトのミーティングは大変かもしれませんが、本当に百聞は一見にしかずなので、個人的には必ず現地を訪問することをお勧めします。交通費やホテル代は通常は雇用主側が負担してくれます。自分の場合は、メールがなかなか返って来ないのでリマインダーメールを複数送り、やっとメールが返ってきたと思ったら”Job offerはできない"と言われたり、オンライン面接で"とりあえず3年の契約で"という雰囲気を出してしまったところ、"うちは長期間働いてくれる人を探しているのであなたはFitしないと思う"と言われたりしました。

2023年3月16日:実際に過去にJ1 waiverをした日本人医師の先輩に、実際に働くことになる雇用主のCEOを紹介してもらいました。その後、オンライン面接を受けて、実際にオンサイトでのインタビューをOfferしてもらいました。

2023年6月19-22日:実際に働くことになる雇用主を訪問し、インタビューを受けました。レジデントも3年目になるとかなり時間があるのですが、2年目は以前拘束時間も長くなかなかスケジュールの融通が効かないので、実際のインタビューの日程のセットアップも簡単ではありませんでした。実際に現地を見学し、非常に良い印象を受けました。向こうからも好印象を持っていただくことができ、実際のJob offerをいただくことができました。この時には、家族みんなで訪問し、実際にその地域を知るために簡単な観光もしました。

2023年7月18日:仕事のContractにサインをしました。サインする前には、職場の上司にContractを見てもらったり、自分が理解できないことはCEOに質問したりしました。結局、一言一句を理解しきることは難しかったのですが、Conrad 30の申請開始である9月1日が迫っていることを考えると、もう他の面接を受けることはできない(新たな雇用主とコンタクトをとり、Vacationをとってインタビューを受ける時間はない)ことは明らかだったので、思い切ってサインしました。過去に先輩がその雇用主の支援のもとJ1 waiverをしていたこと、また実際に会って多職種の職員と話した印象からCEOがとても信頼されていたことから、最後は踏ん切りがつきました。

2023年8月3日:その雇用主が契約している移民弁護士からメールで連絡があり、必要な書類を送りました。この時に、Conrad 30ではなく、HHS waiverでJ1 waiverを行うことを告げられました。弁護士に言われるがまま、DS-3035という申請書にサインし、必要な書類を送り、インディアナ州の医師ライセンスの申請を開始しましたが、弁護士からはHHS waiverの申請自体は来年の3-4月頃に行うので、特にやることはないと言われました。HHS waiverの申請には医師ライセンスが必要なので、必ずその時までにインディアナ州の医師ライセンスを取得するようにと言われました

2024年2月20日:弁護士から連絡があり、HHS waiverに必要な書類を提出するように連絡がありました。

2024年2月27日:インディアナ州から医師ライセンスがおり、必要な書類を揃えることができたので弁護士に提出しました。

2024年3月22日:弁護士からUSCISにHHS waiverの申請が提出されたと連絡がありました。

2024年3月27日:弁護士からUSCISから申請が承認されたと連絡がありました。弁護士からは15日以内に返信があると言われていましたが、わずか5日間で結果が届いたことに驚きました。

2024年4月12日:I-797と呼ばれる書類(J1ビザにおけるDS2019のようなものです)が手元に届きました。この書類が届くことで大使館での面接をスケジュールすることができます。DS2019とは異なり、I-797は実際の雇用者の分しか届きません。もし、Jビザが切れた後に日本に戻るのであれば、日本にあるアメリカの大使館で家族はH4 visa stampを手に入れることができるので、特に問題はありませんが、もし、日本に帰国せずにアメリカに滞在し続けるのであれば、家族のvisa statusをJ2からH4に変更するためにI-539という書類を提出する必要があるようなので、弁護士に自分のプランを前もって共有しておくことが重要と思います。

2024年4月26日:自分の場合は7月1日に帰国予定だったので、帰国後速やかに大阪のアメリカ大使館で面接を受けることができるよう、DS160を完成させ、大阪にある米国大使館でビザスタンプを受け取るための面接をスケジュールしました。

2024年7月1日:レジデンシーを修了し、日本に帰国しました。ちなみに2024年7月時点では、J1ビザホルダーはDS2019が失効した後も"Grace Period"という猶予期間が与えられるので、DS2019が失効後も30日間は合法的に米国に滞在することができます。(https://www.uscis.gov/policy-manual/volume-2-part-d-chapter-3) 。

2024年7月9日:大阪府のアメリカ大使館でビザの面接を受けました。無事に自分のH1ビザと家族のH4ビザが承認されました。

2024年7月12日:ビザスタンプが添付されたパスポートが郵送で自宅に返送されました。

2024年7月23日:H1bビザを用いて米国に入国しました。H1bビザの場合は雇用主との契約開始日から10日間以内に米国に入国する必要があるので、フライトをスケジュールする時には気をつけなければなりません。自分の場合はマイレージを使ってフライトチケットを購入したため日程に融通が効かず、結局マイレージを使ったフライトではシカゴまでしか戻って来れず、別途シカゴからインディアナまでチケットを購入することになってしまいました。

まとめ

以上が自分が経験したJ1 waiver (HHS waiver)のタイムラインです。ご覧になって分かるように、常に前もって何が必要か考え、行動する必要があります。簡単なことではありませんが、やるしかありません。自分の場合は、雇用主も移民弁護士も手続きに慣れていたため、申請自体はかなりスムーズに進んだのではないかと思います。過去にJ1 waiverのサポート経験がある雇用主を選ぶ、というのはひとつポイントになるのかもしれません。また、その雇用主が常時契約している移民弁護士がいるというのも大切ではないかと思います。場所によっては、雇用主からお金を払うので移民弁護士は自分で探すように、と言われることもあるようですが、雇用主と移民弁護士もまた、必要に応じて連絡を取り合ってもらう必要がある(自分の場合はHHS waiverの条件を満たすため、弁護士からContractの修正が入りました)ので、やはりお抱えの移民弁護士がある雇用主の方が安心なのではないかと思います。

以上、可能な限り詳細に自分がJ1 waiverを申請し、H1bビザで米国に戻ってくるまでのタイムラインを記載してみました。この情報が将来J1 waiverを計画している先生方に少しでも役に立てば嬉しいです。

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