米国での家庭医療専門医試験について

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研修終了までいよいよ1ヶ月になりました。自分はHIV primary care trackにも所属していて、最後の1ヶ月はHIVクリニックでの研修を入れています。HIV患者の診療にはまだなかなか自信が持てないので、卒業後HIVの専門医が取れるようにまだまだ最後まで頑張らなくてはなりません。さて、今回の記事では先日受けた米国家庭医の専門医試験について記載してみたいと思います。自分は日本でも家庭医療の専門医試験を受けたので、実際に米国と日本で専門医試験を受けてみて、どのように感じたが、両国の違いにも言及しながら進めていきたいと思います。

家庭医療専門医について

家庭医療専門医を管理しているのは the American Board of Family Medicine (ABFM)と呼ばれる組織で、これはレジデンシーの研修の質を管理しているThe Accreditation Council for Graduate Medical Education (ACGME)や、家庭医の学会的存在であるAmerican Academy of Family Physicians (AAFP) とはまた異なる団体になります。家庭医療の試験に合格し、レジデンシーを卒業するとCertificationを取得することができ、晴れてBoard certified family physicianと名乗ることができます。それぞれの専門科によって専門医試験を受けるタイミングは異なるのですが、家庭医療の場合はレジデンシー修了の前に試験を受けます。自分の場合は4月の中旬に試験を受けて、なんとか合格することができました。

米国家庭医療専門医の試験内容について

試験はComputerで行われるMultiple choice Questions (MCQ)です。1ブロック75問を合計4ブロックこなします。1ブロックあたり95分以内に解く必要があるので、合計で300問の問題を6時間程度かけて解く感じになります。試験はUSMLEと同様にプロメトリックで行われます。試験のソフトウェア自体もUSMLEと非常に似ています。試験の合格率は非常に高く、ほとんどのレジデントはあまり準備に多くの時間を割かない印象です。自分も特に有料の教材などは使用せずに、Inpatient training examと呼ばれる試験の過去問(家庭医療レジデントが毎年受けるテストなのですが、似たような問題が出ることが知られています)やオンライン上に公開されている練習問題を中心に勉強しました。MCQ形式の試験については、かなりテクニックの要素もあるような気がするので、自分が普段どのように準備しているのかは、また後日別の記事でシェアしてみたいと思います。結局、試験前に合計で1400問くらい練習問題を解いたのですが、当日の試験は8割以上の問題がなんとなく見たことのある問題でした。試験の結果判定が出るタイミングはとても早く、試験を受けた3日後には合格の結果判定が届きました。

日本との家庭医療専門医試験の比較

自分が日本で家庭医療専門医を取得したのは、2017年なので、もう最近のシステムがどうなっているか、正直キャッチアップできていないのですが、自分が日本で受けた家庭医療の試験は、MCQに加えて、ポートフォリオの口頭試問と面接試験もあり、『試験』に限って言えば、よりバランスが取れているように思いました。米国の家庭医療専門医試験はMCQだけなので、試験だけに限っていえば短調で、暗記の要素が強くなっています。一方で、コンピューターのMCQなので近くのプロメトリックで試験を受けることができるので、会場へのアクセスという意味では、どの地域でも平等に試験を受けることができます。日本では一ヶ所に専攻位を集めていると思うのですが、会場になる可能性が高い首都圏のプログラムはやはり有利なのではないかと思います。会場に行くまでに多大な時間を要するいわゆる田舎のプログラムと比べるとやはり地域により不平等が生じてしまうのではないかと思います。

試験ではなく研修の質で専門医の質を管理する

自分の感じた結論としては、米国では専門医試験はあくまでも最終チェックであり、そこまで重きが置かれておらず、あくまでも均一化、標準化された研修内容そのものが専門医の質を担保しているのだと思います。研修内容の詳細や経験しないといけない症例、手技などが厳しく設定されていることで、3年間の研修を終えてでき上がる医師の最低限が保証されているということです。やはり米国では、ACGMEが果たしている役割がとても大きいです。日本では総合診療研修の内容があまりにもバラバラなので、その研修を終えた後に『どのような症例をどの程度診て、どのような知識や技術が身についているのか』が非常に分かりづらいです。米国では例えレジデントであろうと、最低限の基準を満たせない場合には、容赦無く解雇されてしまいます。実際に自分の所属するプログラムでも、過去に基準を満たせず、解雇されてしまった研修医が存在しますし、家庭医療ではありませんが、日本人で英語が下手すぎて研修を続けられず日本に帰国となってしまった人がいるというのも有名な話です。この厳密な研修の基準については、またどこかの記事で紹介したいと思います。

今回の記事では、自分が先日受けた家庭医療の専門医試験について記載していました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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