米国でのインフレーションとレジデントの給料の話

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歴史的な円安がニュースになっていますが、我が家もその影響を受けています。レジデントの給料は4人家族を養うには十分ではないので、円をドルに変えながら生活する必要あるのですが、同じだけのお金を両替えしたとしても、(当然ですが)得られるUSドルがかなり減りました。自分が渡米した当時のレートは1ドル110円程度だったので、仮に50万円をドルに両替した場合、4500ドル程度にはなったのですが、1ドルが150円を超えた今では、50万円を両替えしたとしても3200ドル程度しか手元に残りません。研究目的で渡米している人の場合は、ドルでの収入が全くないという人もいるので、さらにダイレクトに影響を受けている人も多いと思います。

この歴史的な円安に加えて、インフレーションが進み、米国での生活コストはうなぎのぼりに上がっています。インフレーションで一番分かりやすいのがアパートメントの家賃だと思います。例えば、自分が現在住んでいるアパートメント(2ベッドルーム)は、自分が入居した2022年1月当時の家賃は1500ドル/月でした。しかし、今回引っ越しにあたり、次の入居者が入る際の家賃を確認したところ、なんと2000ドル/月まで引き上げると言われてしまいました。これに車2台のガレージ代200ドル程度が上乗せされます。自分が住んでいるアパートメントは住み心地は悪くはないのですが、かなり古く、一応ジムはありますが、それ以上の設備はありません。なので毎月2200ドルと言われるとかなり割高に感じてしまいます。1ドル153円で計算してみると、約35万円を家賃として計上していることになります。日本だと高級マンションに住めます。

それでは、インフレーションに合わせて、収入はどうなっているのかというと、確かにレジデントの給料は上がっています。自分が研修をしている組織の、過去のレジデントの給料を見直してみたのですが、自分が入職した2021年は下記のようになっていました。

PGY1: $60,923.00 
PGY2: $63,045.00 
PGY3: $65,270.00 

そして、2024年度は下記のようにレジデントの給料が上がっています。

PGY1: $65,258.00
PGY2: $67,452.00
PGY3: $69,905.00

年収はこの3年間で4000ドル程度(6-7%程度)上がっています。上がった収入には当然税金もかかるので実質は3000ドルと少しの収入増の体感でしょうか。数字だけ見ていると、ある程度給料も上がっているような気がします。しかし、一方で給料以外のBenefitはどんどん削られていることには言及する必要があります。例えば、自分が入職した際はランチ券がほとんど使い放題でランチ代を払う必要はほとんどなかったのですが、今年度からランチの補助が一気に減らされてしまいました。また、毎週水曜日は院内に入っているカフェで無料でコーヒーを飲むことができたのですが、そのサービスも無くなってしまいました。なので、収入は確かに上がっているのですが、生活が楽になっている感覚は全くない、というのが同期と話していて感じる現状です。

自分が8月以降に指導医としてもらう給料は、米国でもある程度余裕を持って生活していくことができる額だと思っているのですが、それでも未来のことはよく分かりません。自分の研修するプログラムでは先週1000人規模のLay offが実施されました。医療業界の未来はどうなるのだろうという漠然とした不安は常にあります。渡米したての頃は、一人一人にじっくりと時間をかけて診療するのが米国の良いところだと思っていたのですが、なるべく短い時間でたくさんの患者をみてお金を稼いで欲しいという雇用者からのプレッシャーは実際に米国でも強く感じます。様々なシステムや診療単価は違うとはいえ、結局は出来高制なので、日本の開業医のようになるべく効率良く、多くの患者を診療すればするほど儲かるのです。これから医師を待ち受ける未来は、なかなか厳しいのではないかと思います。患者とコミュニケーションをとる時間は減り、限られた時間の中でより患者のDiseaseにフォーカスするような流れはほぼ確実なのではないでしょうか。医業に集中している限りは、この息苦しさから抜けられないのではないかと思うと、気持ちがどんよりしてきます。これからは、医師として医業以外に何かしらの収入源を持つことを真剣に考えていかないといけないような気がしています。

-時事問題, 雑記

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