J1 Waiverの労働条件について②

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今回の記事では前回に引き続いて、自分がJ1 Waiverの契約にサインする際に考えたことをシェアしようと思います。この記事では、契約内容のうち、前回説明した金銭面以外のことについて述べていきたいと思います。かなり、家庭医療に特有な情報なので、どれだけの人の役に立つかは不明であると言うことを自覚しつつも、こういった情報はオンラインには本当にどこにも存在しないので、少しでも自分の経験が、将来誰かの役にたてばという希望を込めて記します。

Scope of Practice (診療範囲)を決める

家庭医として働く際には自分の診療の範囲(Scope of Practice)を考える必要があります。大きく分けるとInpatientとOutpatientに分けられます。Inpatient serviceは重症度の高い患者をケアする必要があり、Outpatientよりも労力がかかる(これは完全にその人の好みにもよると思います)ため、自分の周りでは積極的にInpatientも継続してみたいレジデントはかなりの少数派です。そもそも、レジデンシープログラムなどを除けば、外来と入院患者の両方をケアしているクリニック自体がかなり少ないのだと思います。

Outpatientの診療で考えると、産科診療を継続するかどうかが一番大きな境界のような気がします。産科診療は、実際のお産と、お産の前の妊娠管理(Prenatal Careと呼ばれます)に分かれます。実際のお産の管理については、自分が研修を受けているエリアでは、家庭医療の研修の後に追加で1年間の産科のフェローシップを修了しない限りは、継続することは難しいと思います。これは、そもそも産科研修の質が悪く、経験する症例の量も少ないため3年間のレジデンシートレーニングだけでは、十分な知識と技術が獲得できないと言う教育の問題もありますが、ある程度の都市では十分な数の産科がある、ケアへのアクセスも悪くないので、そもそも患者が家庭医よりは産科医に診療してもらうことを望むという側面もあると思います。一方でPrenatal Careは患者が複雑でなければ、やることは決まっているので、比較的診療の閾値は低いように思います。卒後カナダに戻る同僚は、全てのPrenatal Careは20週までは家庭医が担当し、20週以降は産科医に患者を引き継ぐと言っていましたが、特に妊娠の初期については、チェックリストに従って必要な検査を漏れなく行うという側面があるので、産科であろうと家庭医であろうとケアに大きな差は生まれないと思うので、納得だったりします。

その他は新生児の診療(生まれたばかりの新生児の回診や割礼の手技)、小児科の診療、婦人科の診療、手技(IUDやNexplanon insertionなどContraceptionにまつわる手技、関節注射、皮膚生検)などを担当するかどうか決める必要があります。個人的には小児科と婦人科を診療しなければ、内科となんら変わりないでないかと思ったりするのですが、実際に成人の内科しか診ないという家庭医も実際にいます。

Teachingの義務について

レジデンシープログラムであれば、レジデントとの関わりがあるでしょうし、その他のクリニックでもCRNPやPAなどの学生へのTeachingが義務になっているかもしれません。Teachingは自分の勉強になるので、自分は好きですが、自分一人で勤務することと比べると確実にエクストラな労力を必要とします。

CRNP/PAへのSupervision

最近では、Nurse PractitionerやPhysician Assistantはプライマリケアにおいて非常に大きな役割を担っています。多くのインタビューで"これまでにNurse PractitionerやPhysician Assistant"と働いたことがあるか、という質問を受けました。実際に彼らのNoteをSuperviseした上で、彼らのNoteにサインをするという仕事は多くの家庭医のコントラクトに含まれているのではないかと思います。

勤務時間について

平日の勤務時間の確認は当然かと思うのですが、休日のオンコール体制についても確認が必要です。そういった意味で、自分以外にProviderがいない、というクリニックは危険だと思います。毎週末オンコールにされてしまっては、家族との時間も無くなりますし、体力も持ちません。

もう少し書きたいことがあるのですが、長くなってしまうので、もう一つ別の記事にして書くことにします。自分の決断としては、産科診療と新生児診療は行いませんが、小児科と婦人科診療、簡単な手技(IUD, implant, skin biopsy and joint injection)については可能であれば、継続しようと思っています。自分が勤務するプラクティスでは小児科医が常勤として働いているので、小児患者を診る機会は少なくなると思うのですが、日本人の患者層が一定するいるので、日本人の子供を中心に診療の機会を維持できれば、と思っています。

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