J1 Waiverの労働条件について①

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家庭医療レジデントとしての最終年度ももう5ヶ月が経過し、来年の6月にはレジデンシー卒業です。卒業後の進路について妻と相談し、J1 Waiverでもう3年間米国に残ろうと決めたのが、2022年12月でした。今年の1月からJ1 Waiverの仕事探しを始め、8月の末に正式に契約書にサインをしました。全てが順調にいけば、来年の8月からインディアナポリスにある診療所で、家庭医として勤務します。また、ビザの手続きや生活のトランジションなど大変なことだらけですが、これまで通り色々なことがうまくいくと信じて、毎日一生懸命生きていくしかありません。

今回J1 Waiverで仕事探しをするにあたって、苦労した点がそもそも労働契約書(コントラクト)の見方がよく分からないということでした。あるジョブオファーがあったとしても、そもそもの背景知識がないので、そのオファーが良いのか悪いのかの判断できませんでした。今回先輩や友人に聞いたり、複数のEmployerから聞きながら、家庭医としての労働条件について自分なりに考えたことを、これからのいくつかの記事で紹介していきたいと思います。第一段は収入を含めた経済的なことについて考えてみたいと思います。当たり前ですが、収入は仕事を考える時にとても重要になります。いくつか確認すべき項目に分けて説明してみます。

Baseline Salary

簡単にいうと年収のことです。自分が勤務している小都市のエリアだと家庭医の平均年収は$200k程度(円安のせいで日本円にすると3000万円くらいの換算になります)のようです。僻地や人気のないエリアに行くほど年収は高くなる傾向にあると思います。あまりにも相場から外れた高い設定を見た時は、何か理由があるはずなので、注意が必要と思います。レジデンシープログラムのファカルティーポジションは基本的には相場よりは低くなることが多いようです。一般的にレジデンシーのファカルティーポジションでは、ティーチングなどのDutyがあり、診療する患者の数が少ないからだと思います (多くの患者をみれば多くの収入を得ることができるというのは日本と変わりません)。

RVU(Relative Value Units)

Baseline Salaryと同じように大切になってくるのがRVUです。これは簡単にいうと一年間の間に自分がその年収を得るためにこなさないといけない仕事の量です。患者を一人診療したり、手技をしたりするたびにその診療や手技に応じた点数が加算されるのですが、この点数のことをRVUと呼びます。これも先輩の話を聞いたり、自分でJob searchingをした経験からすると4000くらいが家庭医としては妥当なようです。自分はある場所に面接を受けた際に、その場所が本当に気に入ってそこで働きたいと思ったのですが、RVUの設定が5600と異常に高かったこともあり、諦めたという経緯があります。当然ですが、多くのRVUを獲得するためには、より多くの患者を診ないといけないし、より多くの時間を診療にささげないといけません。定められたRVUを満たせない場合にはBaseline Salaryから給料が引かれることになります。逆に定められたRVUを超えることができれば、Bonusを提示するEmployerもいるかもしれません。家庭医の場合は新しい職場で仕事を開始してから、自分の患者のPanelを作らないといけないため、1-2年間はRVUによらずBaseline Salaryが保証されているところが多いようです。その他のBaseline Salaryに影響を与えうるファクターとして場所によってはColonoscopyの完遂率、糖尿病のコントロールの目標などの達成率などのQuality Indicaterが設定されているところもあるかもしれないので、確認が必要です。

CME (Continuing Medical Education) Money

米国では医師はCME moneyと呼ばれる予算を当てられます。学会の年会費や、Conferrenceへの参加費用、テキストブックや講習などの費用についてはそのCME moneyの金額内であれば、Reimbursementを受けることができます。自分は現在レジデントですが、年間1500ドルのCME moneyをプログラムからいただいています。1500ドルというと結構な額に見えるのですが、米国では移動も飛行機での移動が必要になることが多く、カンファレンスの参加費用も非常に高いので、1つカンファレンスに参加するとおそらく1500ドルは一瞬で無くなってしまうと思います。家庭医の指導医としては年間3500-5000ドル程度の提示が多いようです。レジデンシープログラムや大学病院のクリニックなどアカデミックな職場の方が高い金額を提示する傾向にあるようです。

その他

自分の場合は、もし万が一のことがあり、自分が3年間勤務できなかった場合の違約金についても確認しました。とあるところでは契約満了前に解約する場合には、5万ドルの違約金を提示するところもありました。その他、今後の記事でも書きますが、Benefitを確認し、医療保険や障害保険の掛け金について確認することも必要と思います。

以上簡単ですが、家庭医として労働契約を交わす上で重要な経済的な条件について説明してみました。次の記事ではその他に考慮するべき点について、説明してみたいと思います。

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