英語で何かを学ぶ時に経験すること

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前回の記事を書いてから、2週間程度しか経っていませんが、自分の中では英語でのコミュニケーションで大きな違いを感じ始めました。なぜか分からないのですが、以前と比較すると英語での理解、英語での発信が苦しくありません。カンファレンスや勉強会でも内容にフォーカスできるようになってきて、少しずつ楽しくなってきました。非常に苦しい時間が続いていましたが、ようやく1枚目の壁を超えて、次のステージに進みつつあるのかもしれません。この言い方が適切でないことを認識した上であえて記載しますが、自分は自分の言語力不足によるコミュニケーション困難を障害のように感じていました。聞きたくても聞こえない、話したくても話せない。この不自由さは自分にとってとてつもなく辛いもので、想像を絶する苦痛でした。

いったい自分は何を学びに来たのか?

この問いは自分が渡米してから、ずっと感じてきたことです。カンファレンスや勉強会では知らない単語をメモしたり、サインイン/サインアウトでも、自分の知らなかったプレゼンテーションの言い回しをメモしたりすることに気を取られて、肝心の内容がほとんど記憶に残らないということがよくありました。例として、とある日に自分が指導医と一緒にラウンドした際にとっていたメモを紹介します。

"Could you please tell us what is your understanding of everything that's happening so far?" (患者の病状理解を尋ねるフレーズ)

"Do you have transportation?" (患者の帰宅手段を尋ねるフレーズ)

"We did some blood works, and we are reassured that we don't think it is related to infection." (患者に採血結果を伝えるフレーズ)

の3つの文章をメモしていました。指導医はこいつ一生懸命メモをとっているなー、と思ったに違いないのですが、そのメモはTo doリストでも医学知識でもなく、同僚や指導医が話した臨床でよく使う英語のフレーズを後で覚えて使うためのものでした。このようなメモを指導医に見られるのはあまり心象がよくないと思うので、自分はメモは人から隠すようにしています。でも、こうやって地道に言い回しをストックして、覚えて、自分のものにして、それを繰り返して、ちょっとずつ増やしていくしかないわけです。そして、自宅に帰って一日の振り返りをしながら、気づきます。これは家庭医療の勉強ではなく、完全に英語の勉強です。自分は家庭医療の研修をするためにアメリカに来たはずなのに、英語ばっかり勉強していったい何をしているのだろう、と悲しくなることもありました。

UPTODATEを使い始めた時のこと・・・

今思うと自分は似たような経験をしたことがあります。自分が初期研修医一年目でUPTODATEを使い始めた時の話です。自分は学生時代はそれほど意識も高くなく、英語の勉強などほとんどしたことがなかったので、医学単語などほとんど知りませんでした。Sodium、Potassiumさえ、知らずに同僚の前で恥ずかしい思いをしたこともあります。当時はUPTODATEでこれを調べよう、と思って何かしらのトピックを読み進めても、結局そのトピックの中の単語が知らない単語だらけなので、たくさん辞書を引く必要が生じます。結局30分とか1時間とか長い時間をかけて、自分のクリニカルクエスチョンに該当する部分をなんとか一通り目を通していました。しかし、読み終わって見ると、結局、分からなかった単語のメモだけが残り、『あれ、自分のクリニカルクエスチョンってなんだったけ?』みたいな状況が生じるわけです。自分が渡米後に感じたことは、この時の感覚と非常に似ています。最終的に初期研修の2年間、分からないなりにもUPTODATEを引き続けて、単語を調べ続けていたら、後期研修の初め頃にはある程度、負担なくUPTODATEで調べものができるようになっていました。

英語で何かを学ぶ時に超えないといけない壁

結論としては、あるコンテンツを英語で勉強する場合、そこに出てくる最低限の英単語を知識として持っていない限りはその英語のコンテンツから効率よく学びを得ることは難しい、ということです。当然必要な単語の質や量はそのコンテンツによって異なると思います。読み書きでも、医学の二次文献を読む時に必要な単語と原著論文を読むのに必要な単語の質や量は違うでしょうし、例えば、医学以外でも、CNNなどの英語のニュースの文章、また英語の小説などを読むとその中に出てくる単語の質は全く違います。そして、例えば英語のスピーチやDiscussionから何かを学ぶとなると今度は単語の量に加えて、最低限のSpeakingとListeningの能力も必要となってきます。こういったように、英語で何かを学ぼうと思った時にはその時々の英語力によってですが、学習の壁が生じるということには自覚的であった方がいいと思います。もし、効率よく物事を進めていきたい場合、思わぬ時間のロスや、意図せぬ質の低い学習につながってしまう可能性があるからです。でも、その壁が人生を考えた時に超えるべき壁なのであれば、その効率の低い時間を耐え抜いて、壁を超えないといけません。総合診療医に関していうと、英語の二次文献からの情報収集はどうしても必要なので、この壁はどうしても超える必要があるのですが、英語の学会やスピーチ、海外での学位取得などはオプションなので、日本で医者するために、必ずしも超える必要があるとは思いません。

少しずつ英語学習の時間を減らして、本来自分が勉強したかったことに、使える時間の利用をシフトしていこうと思っている今日この頃です。サマータイムも終わり、昨日は初雪が降りました。空も雲に覆われ、いよいよ冬が始まりました。

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