US Residency Matching③ 〜インタビューで抑えておくべき質問たち〜

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この記事ではマッチングのインタビューで優先的に抑えておくべき質問を記載したいと思います。筆者は2020年のマッチング参加時には、卒後8年目、純ジャパニーズ、留学経験は全くありませんでした。US Naval Hospitalで1年間Japanese Fellowとして働いた経験はあるものの、海外で暮らした経験もなく、発音もおそらくは典型的なJapanese Englishです。それでも、念入りに準備をしたおかげで、インタビュー当日はなんとか乗り切ることができました。注釈ですが、ここに記載されているのはどこかのプログラムで聞かれた質問というわけではなく、あくまでも一般的な話です。ほぼ全ての質問が対策本に記載されている質問だと思います。本当は、自分が作り上げた英文全文も公開しようと思ったのですが、個人的な情報も多く、どこまでブログに記すべきか悩んだ末に削除しました。しかし、それぞれの質問に対して、自分がどのように考え、どのような回答を用意したのかの説明に加えて、個人情報に影響しない細かいフレーズについては一部公開しています。渡米を志す若い先生方の役に立てばこれほど嬉しいことはありません。もし、自分が作りあげた解答集に興味があれば、個別に連絡いただければ、対応を考えますので、気軽にご連絡いただければと思います。

念入りに準備すべきHigh Value Questionsたち

1. ごく簡単な自己紹介
(Ex: Please tell me a little bit about yourself)

まずは、"First, I would like to thank you for giving me the opportunity to interview with you. I really appreciate your time to speak with me. As a brief introduction, my name is Taro Tanaka."などと感謝の気持ちを述べて、名前を伝えます。その後、自分の場合は、自分の(普通ではない)経歴と目標(レジデンシーを終えたけど、アメリカで学びなおして、アメリカの強みを日本に持って帰りたい)を初めに持ってくるようにしました。どのみち聞かれることだろうし、自分の一番の特徴でもあるからです。その後に、もし時間が許される空気であれば、医学とは全く異なる自分の家族のことについても少し言及し、バランスを取るようにしました。30秒から長くとも45秒以内程度には収める必要があると思います。

また、これは自己紹介だけではなく、CVでも同様だったのですが、大学病院の医員をどのように英語訳していいか悩みました。結局、京都大学の翻訳例(https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/about/name/8dyy8q )を参考にして、Clinical FellowとCVに記したのですが、米国で働く日本人の先生からClinical Fellowというポジションがそもそも米国にはないと指摘されたため、簡単な説明を準備していました。また、このようなことを調べる過程で、米国では、助教授(Assistant Professor)の方が、講師(Lecturer)よりも上位のポジションであるということも知りました。

What is your recent working experience like?
Old IMGとしてしっかりと臨床をしているということはアピールする必要があると思いました。特に夜勤も問題なくこなしているということもさりげなく伝えるようにしました。

2. 人生やレジデンシーにおける目的を聞いてくる質問
(Ex: What is your future plan, and how does joining our residency training help you/achieve your goals? What would you like to obtain through our residency training despite already having finished residency in Japan? What are your goals while here in the residency program? )

このような質問については、以下のようなフローで答えるようにしていました。自分の目標は------です。その目標を叶えるために、US residency trainingでAとBを学びたいです。Aについての説明 / Bについての説明。そして、最後の一言。自分の場合は、A = Full spectrum Family Medicine, B = US medical education systemとし、なぜ日本では学べなかったのか?が分かるような記載を心がけました。

また、渡米したい理由を説明する時には、自分が日本で受けた研修を決して貶さないように心がけました。状況によっては、"I appreciate the training I received in Japan, which taught me to see patients as a person, not just as a disease, unfortunately, the curriculum was not standardized to teach full spectrum family medicine. "のような形で、日本の家庭医療の研修に関するポジティブな側面も述べるようにしていました。おそらく理由Aのパラグラフだけで10回以上書き直したと思うのですが、修正を繰り返す中でようやく自分の思いと文章が一致してきたという実感がありました。みなさんもこの質問は何回も何回も向き合って納得がいくものを作り上げてください。

また、これはPSにも関係しますが、日本に帰るということをはっきり述べてしまっていいかは悩んだのですが、それを曖昧にしてしまうと自分の目標や渡米理由の根底がゆらいでしまうので、自分ははっきり述べることにしました。これは正直言って、面接官やそのプログラムによって正解不正解が異なる質問と思います。その地域に残って働く医師を渇望するプログラムにとって、米国で学んで日本に帰るという医師が欲しい人材でないことは明らかです。実際にインタビューの中でインタビュワーとして参加していたレジデントの先生から、そのことを明らかに不快に感じるような雰囲気を感じたことがありました。しかしながら、Your goal is really clear.と面接官から褒められることもありました。本当に悩ましい問いです。自分の場合は最終的に、米国で実際に働いている先生の意見も参考に、もし付け足して話す時間があるのであれば、I want to be open to any ideas, and understand that my view or goal can change during my residency experience in the US. So I am flexible about my future plans, however, I am deeply committed to pursuing my passion of full spectrum family medicine and becoming a leading physician in this field in Japan or even in the US. と説明し、米国に残って働く可能性も十分にあることを伝えるようにしていました。

3. そのプログラムである必要性についての質問(Ex: Why would you like to train at our program?)
なぜ私たちのプログラムなのか?は必ず聞かれる質問だと思いますし、印象に残るためにも練り上げた答えを用意する必要があると思いました。実際に見学したことのあるプログラムは「見学したことがある」という事実がそれだけでとても大きな理由になり、自分の強みになることも実感しました。自分はまずは、どのプログラムにおいても、初めに、"There are three reasons why I would like to train at your program."と初めて、3つの理由を述べるように心がけていました。

可能であれば、どのプログラムにでも当てはまることではなく、そのプログラムに特異的なことを述べた方がいいと思います。実際に行った時のことや、その時の経験はその最たるものです。やはり大切なのは、具体的な答えを用意することだと思います。コロナの問題もあり、実際にObservershipを行ってからアプライすることは不可能なので、しっかりとプログラムのホームページを調べて、そのプログラムに特異的な部分を強調するのがいいように思います。その他には知り合いがいる、日本人の卒業生が多い、その場所自体に何かゆかりがある、などがあれば必ず説明するべきと思います。それでも、やっぱり理由がなかなか見つけられないプログラムはあるかもしれません。その場合は家庭医療の場合はどのプログラムもFull spectrum Family Medicineを強調しているので、これはプログラムによらずある程度使える理由になります。そのプログラムに特化した理由がない場合には、渡米を目指す理由とある程度重なってくるのですが、これを第一の理由にして説明していました。そして、この手の質問は最後は、"For those reasons, I believe this residency to be a great fit for me and my goals."と力強くクロージングするようにしていました。

4. なぜそのスペシャルティを選んだか?(Why have you chosen family medicine as your specialty?)
なぜそのSpecialtyを選んだのか?という質問も必ず聞かれることになると思います。CVでも言及している人が多いと思いますが、自分の話言葉でうまく説明できることが重要です。ここでも、とにかく具体的に、エピソードを盛り込んで説明をするように心がけていました。

5. 今後のキャリアプランに関する質問
(Ex: Where do you see yourself in 5 years? Where do you see yourself in 10 years? What is your future plan? What are your plans upon completion of your residency?)
大まかにはレジデンシー、フェローシップ、日本に戻る、大学で教育とリサーチを頑張るというエピソードを作り、質問によって近い未来、遠い未来のプランを選びながら説明していました。
Residency終了直後:フェローシップに進みたい。
Fellowship終了後:おそらく日本に戻って大学病院で働いている。
10年後:日本に戻ってしばらくして・・・:きっと学生の教育や、大学を基盤とした家庭医療研究の推進に取り組んでいる。
といった感じです。
また、"I also hope to continue to work with my colleagues in the US and keep that collaboration and partnership going through various educational and research projects."と今後の関係性の発展についてのコメントも準備して、機会があれば伝えるようにしていました。

6. あなたはプログラムに何をもたらせるの、系の質問
(Ex: What makes you stand out from other applicants? What differentiates you from other candidates? What can you provide to our program? Why should we choose you? Why should we take you in preference of the other (American) candidates? What do you feel you could add to our program?)

これも聞かれる可能性が非常に高いと思います。やはりここでも3つ理由をあげることにこだわり、最終的に①多様性(New ways of thinking)への貢献、②リサーチへの興味、③Strong sense of purposeの3つあげて説明していました。多様性については"Because Innovation and progress always benefits from diversity, the more opinions and minds you have, the more likely you will have a breakthrough. "などと補足することもありました。

以上にあげた6つのトピックをしっかり固めることが最優先と思います。このロジックがしっかりしていて、英語もしっかりした文章を持っていれば、非常に多くの質問に対して、柔軟に回答することができるはずです!

その他用意しておくと役立つトピックや小話

一定の頻度で聞かれるものの、ある程度準備をしておかないと答えるのが辛いトピックがあると思います。自分がどのようなトピックを準備したか公開します。

7. リーダーシップについての質問
(Ex: Tell us how you lead teams? What leadership qualities do you draw on when you lead teams? Which leadership qualities define you? How would you define yourself as a leader? What do you do to lead teams? Tell us a time when you were in charge of leading a team? Define leadership. )

"There are many styles of leadership, and different types of leadership are required according to the situation. This is just my opinion based on my experience as a captain of our university’s rugby team. Great leaders do several things."と前置きした上で、①目標設定、②見本となること、③チームメンバーのための環境整備、とやはり3つあげて説明していました。またリーダーシップに絡めてCommunicationについての文章も下記のように用意していました。

I feel communication is one of the most important qualities of an effective leader, in order to perform leadership in the primary care field. A doctor rarely does all the work, but rather we are constantly working with nurses, therapists and social workers, to ensure that patients receive the best care. So I rely on my team to effectively treat my patients. For the team to be functional (work well), each professional has to respect each other and understand their role, and this requires good communication with all team members. That's why I think communication is the most important qualities of an effective leader.

これは特定の質問を想起した回答ではないのですが、いざという時に逃げるために使える貴重なフレーズでした。私はコミュニケーションが大切だと思います、という曖昧な答えで、厳しい質問から逃げ切れたことがありました。

8. 困難やコンフリクトをどのように乗り切ったか?
(Ex: Describe a difficult time in your life and how you dealt with it?)
自分は昔の自分の病気のエピソードをあげて、自分にコントロールできることに集中することの重要性を説明するようにしていました。自分をMemorableにするエピソードがあれば惜しみなく出していくべきだと思います。

9. 印象に残ったCaseについて(Ex: Do you have any interesting cases to discuss? What is your most impressive(memorable) case in your practice and what did you learn from it?)
これも絶対に準備しておいた方がいいと思います。用意していないと答えに困るはずです。自分の場合は実例に沿って説明しやすいように修正しました。

10. 落ち込んだ時、ミスをした時のこと
( Ex: Tell me about a time when you were disappointed in your performance. Tell me about your mistake and how You handled it then.)
こういった質問に対して、Anecdotesがいくつかあると、その質問に対してどのAnecdotesをぶつけるのが一番いいか、といった頭の回転が回るようになってきます。例えば、職場でのトラブルを乗り越えてスタッフとの信頼関係を築き上げたというエピソードがあったとすると、そのエピソードは凹んだ時だけではなくて、失敗した時、職場での人間関係がうまくいかなかった時、職場でのコンフリクトを乗り越えた時、Constructive feedbackを与えた時についての質問など、多岐にわたって活用できるはずです。それらしいエピソードを複数個用意し、質問に応じて適宜引き出すことができれば、多くの質問に対応できるはずです。また、自分はこのような質問に対する答えとして、当初アンガーマネジメントを学んで乗り越えた、的な答えを用意していたのですが、米国ではアンガーマネジメントを学んだ、と声高に言わない方が良いようです。複数の米国人医師に修正されたのですが、米国ではアンガーマネジメントは、病的に怒りがコントロールできない患者に対し、処方される教育といったニュアンスで捉えらえてしまうようで、アンガーマネジメントを学びました!と言うとかなりやばい奴と思われてしまう可能性があるようです、、、。

12. What error have you made in patient care?
色々考えたのですが、実際のミスをポジティブに伝えることに苦慮し、最終的に「幸い患者のケアで大きなミスをしたことがない」と説明したうえで、自分の長所をさりげなくアピールする方針としました。

13. What would be challenging for you if you start residency in the US?
こういった質問で、英語がチャレンジというのは避けるようにしていました。実際は英語は全然大丈夫ではないのですが、英語が壁になる可能性があるということは絶対にプログラムには感じさせない方がいいと思います。

14. ストレスコーピングについて
(Ex: What do you do to cope with stress?)

自分にとっては家族の存在と家族への愛をアピールできる質問でした。

15. 個人の特性について
What is your strength?
What would you say are your major weaknesses?
これもよくある質問なので、回答を固めておくべきと思います。

CVやPS の内容について

自分のアプリケーションの中に記載してExperienceなどはある程度、質問を想定して準備すべきと思います。以下の質問は完全に個人的になってしまうので、みなさんにはあまり該当しないと思いますが、参考までに記載しておきます。

16. USNH Yokosukaについて
自分の場合はUSNHでの研修に関連した質問は一通り用意していました。
Could you please tell me about the experience at USNH?
How was the rotation of FM at USNH Yokosuka?
Please tell me the most interesting transfer case.

説明の中では、"I learned difference of practice between two countries.Participating in some social events such as Halloween party, Christmas party was also fun. Our program director invited us to a home party, and we attended with our families. Such experiences helped us to familiarize ourselves with US culture as well as American style of medicine. That was the most exciting and challenging year in my life. "などとさりげなくアピールするようにしていました。

17. 日本の家庭医療について
Please tell me the current situation about family medicine training system in Japan.
Can you really apply what you will learn in the US to Japan given that the health care systems are so different
PSの内容に関係した上記の質問への答えは事前に準備していました。

みなさんも自分のPSやCVを見ながら、必要に応じて色々と質問を想定し、準備してみてください!

その他

18.家族やプライベートのこと
Tell me about your family.
What is your family plan?
What do you do in your spare time?

本来であれば、あまり聞いてはいけない質問なのかもしれませんが、しっかりと準備するようにしていました。Family Planについては、初めは1人で渡米し、落ち着いたタイミングで、アメリカに連れてくるという想定で回答を準備していました。

19.コロナ関連の質問
やはり、トピックなのでインタビューで改まって聞かれることはなくてもレジデントやファカルティーとの雑談で聞かれる可能性があります。必ず準備しておくべきと思います。

How is the COVID 19 situation in Japan now?
About Vaccine in Japan?
What do you think about virtual examination?
How COVID 19 affected your practice?
What do you want to do when this pandemic is over?
Why less COVID19 patients in Japan?

Do you see COVID19 patients in Japan?
などの質問を想定し、準備していました。

20.トラブルシューティング
これも笑けてしまうかもしれませんが、うまく答えられない時の乗り切り方までしっかりとフレーズを作って準備していました。ちょっと考える時間が必要な時は、"Please can you give me a moment."、"May I have a moment please?、"Can you give me 10-15 seconds to organize my thoughts?"などと、どうしても答えるのが難しい時、固まってしまいそうになった時は"I’m sorry if I wasn’t able to articulate myself(ny answers) clearly. Would you mind moving to the next questions?"といった対応を準備していました。

面接の最後の締めの言葉

最後は"I really appreciate this opportunity to interview with you today, I think your program would be a great fit for me and my family, and I know that it would definitely help me achieve my long term goals. Should you have any further questions or need any information please feel free to contact me at any time."とにかく力強く感謝の気持ちを伝えてクロージングするようにしていました。

以上、長くなりましたが、自分が最低限の準備と考える質問と、自分がどのように考えて、回答を準備したか、ということを記載しました。インタビューの準備は自分と向き合う孤独な戦いです。どのような結果になろうと後悔しないように、必死に考えてください。みなさんのマッチング成功を心から祈っています。

-レジデンシーマッチング, 臨床留学

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