医者6年目で受けたUSMLE

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日本と異なりアメリカでは医師国家試験の点数が非常に重要されています。この点数が医学生のClinical performanceと正の相関がある(Adv Med Educ Pract. 2019 Apr 26;10:209-216.) 、STEP2の点数がBoard Examの合格率と正の相関がある(Ochsner J. 2018 Fall;18(3):204-208.など)など言われているため、Selectionの時に考慮されるようです。ただ合格するだけではダメという点は日本の医師国家試験とは大きく異なる点です。

臨床留学を目指すほとんどの仲間が学生や初期研修中にSTEPを取得している中、自分は医師6年目から勉強を始めました。後期研修を終え、横須賀米海軍病院に来た2018年3月の下旬にUSMLEの勉強を開始し、約3ヶ月の勉強期間を経て、6月にSTEP2CKを、約5ヶ月の勉強期間を経て12月にSTEP1を受験しました。学生や初期研修の先生の情報は多いと思うのですが、意外に卒後年数が経ってから勉強を始めた受験者の体験談は少ないです。6年目での受験で、海軍病院という勉強時間が十分に確保できた特殊な環境での話なので、皆さんの参考になるかは分からないのですが、自分も勉強しながらインターネットでの体験記は色々な人のものを読んだし、n=1の経験談でも十分意味があると感じたので、自分の体験を簡単に文章化してみたいと思います。

<STEPの勉強一般に思うこと>

・まずは受験日を決める

自分は1年で全てのSTEPを揃えると決めていたので、4月の段階で年間のスケジュールを立てていました。もう学生ではないからこそ、受験日を決めてその日に合わせて調整をしていくという方法を取りました。無限に時間があるわけではないし、ダラダラと勉強を続けることだけは避けた方がいいように思いました。準備期間は人によっても異なると思います。週あたり勉強に割ける時間、試験までにこなしたい勉強量、目標としたい点数、取得したい期限などにもよると思います。もちろん、模試の結果などで再調整はあってもいいと思うのですが、この目標や見込みを立てずに動き出すことだけは絶対にやめた方がいいと思います。なぜそう思うかというと、記憶力には限界があるからです。本番の日がピークになるようにどんどん知識を詰め込んでいく必要があるからです。例えば1日1時間の勉強だとその日に覚えた分、これまで覚えたことを忘れていて、結局プラトーのままということが起こりえます。維持すらできない可能性もあるかもしれません。STEP1のテスト範囲はそれほど広大です。個人的には1日最低3-4時間、休日や直前期などは1日10時間ほど勉強できると知識量が増えていく感覚が得られると思いました。230点以上を目標にしようと思うと、日常生活や他の業務に対して確実に支障が出ます。自分は試験の前はなるべく試験勉強に集中して、それ以外のことはしないように、考えないように心がけていました。STEP1の受験前にはメールの返信や事務作業を含めて色々なことが滞りました。せっかくUSNH で活きた英語を学べる環境がすぐそばにあるのに、図書館にこもって勉強しなければいけない葛藤に苦しみました。なので、受験前に思ったよりも成績が伸びなかった時も、延期は考えられませんでした。延期したところで、これ以上の良いコンディションで本番を迎えられる自信はなかったし、何より勉強のために犠牲にしているものが大きすぎて、この生活をこれ以上続けることは考えられなかったからです。たしかに、低スコアをとってしまうと、道が途絶えてしまうことがあるかもしれない厳しい世界です。でも、学生ならいいのですが、働きながら勉強している人にはダラダラ勉強することで失ってしまうものもあるかもしれません。スコアは維持しかできず、伸びないのに、日常診療には支障が出続けるかもしれません。また、STEP1でいい点数を取ったとしても、CSで落ちてしまって道が途絶えるかもしれないし、試験でいい点を取ったってInterviewに呼ばれないかもしれないし、何か他の事情で道が途絶えることだってあるかもしれません。最終的には自分で決断するしかないのですが、自分は期限を決めて集中して勉強するということは、時間に限りある社会人にとって仕方のないことのように思うのです。

・まずはとりあえず1周する

これは何をするにも大事かもしれないのですが、まずは1週目をとりあえず終えてしまうことが大事な気がします。一周して全体像をぼんやり把握することができれば、安心できるし、勉強の計画も立てやすくなります。一周目は分からない単語や概念も暗記ソフトを用いてどんどん機械的に覚えていくようにしました。全く見たことのない覚えるのは本当に辛いです。でも1回聞いたことのある言葉であれば、記憶しやすくなります。とりあえず1周してしまって、意味はよくわかってないけど、なんとなく単語を覚えていれば、意味づけはあとからできるということもよくありました。

・暗記ソフトを活用する

多分ネットには何種類か似たようなソフトがあると思うのですが、自分はAnkiというアプリを使っていました。有料の携帯版も購入し、外来の隙間時間や昼食の時間、空いた時間があれば常に作ったカードを見直していました。特に第2子が産まれてから受験までの3週間の間は週に8000-9000枚くらいカードを見直していました。合計のカード数はSTEP1 3016枚、STEP2で1693枚でした。このことからも、いかにSTEP1の暗記量がSTEP2CKと比べて多いか、が見て取れると思います。このソフトはオンラインクラウドにカードのデータをためて各デバイス間で同期できるのですが、同期する時に何キロバイトのデータを処理したかがでるんです。ガリガリと何十枚か暗記したあとに、ソフトに同期をしても自分が暗記した量はわずかに10キロバイト程度だったりして、自分の脳のメモリーや処理速度なんて所詮そんなもんか、ととても切なくなる時がありました。

<自分がやったこと>

・STEP2CK

USMLE worldを1周、間違えた問題は2周、さらに間違えた問題は3周。USMLE world のself asessment問題、NBMEの模試全て、解きながら分からなかったところは基本的にはFIRSTAIDやインターネットで調べて、できなかったことをまたカードにして登録する、の繰り返しでした。NBMEは少しずつ、改善が見られているのですが、自分が購入したときは正しい答えはわかるものの、解説が全くないため、インターネット上で検索したりする必要があり大変でした。特に始めの方は解いた後の答え合わせにかなりの時間がかかりました。それでもNBMEが公式の模試なので、出題形式や出題範囲などは一番近いだろうと思い、購入できる全ての模試を購入し、ときました。

・STEP1

USMLE worldを1周、USMLE world のself asessment問題、NBMEの模試全て。STEP2と同じく、解きながら分からなかったところは基本的にはFIRSTAIDやインターネットで調べて、できなかったことをまたカードにして登録する、の繰り返しでした。NBMEは1番実践に近い問題だろうと考えて、全て購入して解きました。NBMEは正しい答えはわかるのですが、その正解に至るまでの道筋が分からず苦戦することも多かったです。オンラインで検索するのですが不完全な回答しか発見できないこともしばしばでした。FIRSTAIDは可能な限り、頭からページをめくっていって、明らかに1度も見ていないところがないかどうか確認し、抜けているところで一対一対応で覚えれそうなところは、これまた適当にカードを作ってAnkiに放り込んで行きました。最初の1周をするのに約3.5ヶ月かかりました。その後で2週間くらいかけてひたすら作ったAnkiカードを読み込んでいきました。

<模試のスコアと実際の点数>

これも公開することに賛否はあるのは分かっているのですが、自分のように模試で希望する点が出なくても思い切って受験し、予想より良い点が取れたという経験談も誰かの参考になるかもしれないと思い、公開する次第です。

・STEP1関連の模試のスコア

12/7 NBME18:215、12/11 UWorld SA1:243、12/14 NBME17:223、12/16 NBME16:228、12/20 NBME15:215、12/22 NBME19:221、12/26 NBME13:225、12/28 受験 248。

・STEP2関連の模試のスコア

6/4 NBME6 213、6/18 NBME7 233、6/18 UWorld SA1:236、6/20 NBME8 232、6/25 受験 249。

自分の場合は運が良かったのかもしれませんが、いずれのテストも実際の点数が模試の点数を大きく超えました。

<ECFMG取得にかかった費用について>

STEP全ての受験費用4290ドル→471900円(110円/ドル換算)、模試やテキスト代1358ドル→149380円(NBME模試60ドル×9、Uworldのオンライン問題集379ドル×2、Uworldの模試40ドル×4)、LAまでの飛行機代128890円、LAでのホテル代65397円。、日本人の発音矯正教室36000円、オンラインの英会話教室60000円。合計81万円5567円。

→自分はカプランやNYCS prepは受講していないし、教材もUSMLE worldしか使っていないので、これでもかなり安くあげている方だと思います。英会話の対策も、自分はUSNHのプロバイダーにかなり協力してもらいましたが、日本の環境にいれば、もっとお金をかけた対策が必要だと思います。

以上自分の経験を簡単に記しました。この記載が、特に卒後年数が経って臨床留学を目指し苦闘している仲間に役立つことを祈ります。

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