横須賀米海軍病院(USNH Yokosuka)の日本人インターン(Japanese Fellow)とは?

更新日:

自分がUSNH Yokosuka Japanese Fellow Programにアプライした2018年当時、プログラムに関する情報が少なく、非常に苦労したことを覚えています。インターネットで検索しても、過去に日本人インターンとして勤務した人のブログの記事が少し出てくるくらいで、実際の勤務や生活に関する情報はほとんど見つかりませんでした。USNHで働く知り合いや友人がいれば、そこから情報を得ることができますが、そのような人は少数なのではないかと思います。今後、USNH Yokosuka Japanese Fellow Programへのアプライを検討している人のために、このプログラムで何を学べるのか、自分の経験をもとに述べたいと思います。

USNH Yokosuka Japanese Fellow Programとは?

横須賀米海軍病院では、1952年から若手日本人医師に向けて1年間の研修プログラムを提供しています。毎年、夏に選抜試験が行われ、6人のJapanese Fellow(以前は日本人インターンと言われていました)が採用されます。同様のプログラムは沖縄海軍病院(6人)、横田(4人)・三沢空軍病院(4人)でも行われており、米軍病院のJapanese Fellowとしては国内に約20人/年の枠があることになります。

自分がこの4つのプログラムのうち横須賀を選択したのは、やはり立地によるところが大きいです。横須賀米海軍病院は、京急線の横須賀中央駅から徒歩10分程度のところに位置しています。横浜から横須賀中央までは乗り換えなしで30分弱程度で、東京や横浜で行われる勉強会にも非常に簡単に参加できるのは利点だと思います。月に1-2回は家族の住む関西に帰りたかった自分としては、沖縄と三沢はアクセスの面で選択肢にはなりえませんでした。結局自分は横須賀と横田の2箇所にアプライするつもりでしたが、運よく最初に受験した横須賀のプログラムに拾ってもらうことができました。

このプログラムに参加する医師は将来何かしらの形で渡米を目指す人が多いですが、そのまま日本の病院で働く人もいます。米軍病院で勤務するメリットとしては、活きた医学英語を学び自分の語学力を向上させることができる、比較的時間が取れるのでUSMLEなどの試験勉強に時間を割くことができる、米軍病院の医師から推薦状(臨床留学を志すのであれば最低3通必要です)を書いてもらうことができる、などがあげられると思います。

この記事では、Japanese Fellowの仕事について記載します。USNHの中での生活については、別記事(横須賀米海軍病院(USNH Yokosuka)での生活について)を参考にしてください。大きく分けてUSNHにおけるJapanese Fellowの仕事は2つです。USNHから日本の病院への患者搬送とUSNHでの各科ローテーションです。

患者搬送(Transfer)について

USNH Yokosukaは小さい病院であり、専門的な検査はできません。内科と外科は一般内科・一般外科しかありませんし、いくつかの専門科(脳神経外科、形成外科など)、集中治療室はありません。したがって、USNHの診療科ではカバーできない患者や、重症な患者が来院した場合には、その患者を日本の病院に搬送する必要があります。その際に、各部署と連絡を取り合って患者搬送を調整するのが、Japanese Fellowの重要な仕事です。患者搬送業務の詳細については別記事(横須賀米海軍病院(USNH Yokosuka)での患者搬送業務について)をご参照ください。

ローテーションについて

患者搬送が必要な時のために、常時1人がオンコールの携帯電話を持っているのですが、それ以外のメンバーはローテーションに集中することができます。このプログラムでは、USNHにある各科の外来をローテートし、米国式の医療を経験することができます。ローテーションでは問診をとらせてもらったり、カルテを書いたり、指導医の監督のもと簡単な手技をさせてもらったりできます。全て米国式なので、これまで日本で学んだこととは異なる臨床があり、とても刺激的で面白いと思います。こちらについても詳細は別記事(横須賀米海軍病院(USNH Yokosuka)でのローテションやその他の学習機会)で紹介します。

医学英語を学ぶには最高の環境

USNHは医学英語を学ぶのに日本国内でベストな環境であることは疑いの余地がありません。基地の中はアメリカです。患者はアメリカ人です。上司はアメリカ人でしかも医師で、いつでも無料でOfficeに質問しにいくことができます。日本で医学英語を苦闘して学んでいる方には、これがどれほど素晴らしい環境なのかすぐにわかると思います。特にプレゼンテーションや問診の仕方、コンサルテーションの方法など、Nativeのアメリカ人医師からこれだけ密に学べるのは日本ではUSNHだけだと思います。自分の履歴書(Curriculum Vitae)や自己推薦文(Personal Statement)をチェックしてもらうこともできます。また自分の努力次第で英語の暴露はいくらでも増やすことができます。自分は平日の夜や休みの日も時間が許せば可能な限りERに顔を出すようにしていました。また、自分はどうしても勉強に忙しくできませんでしたが、海軍病院の指導医や海兵(コアマンと呼ばれ、病院内でスタッフとして働いています)と飲みにいく、基地の中のイベントに積極的に参加するなど自分の関わり方次第で、色々な楽しみ方ができると思います。自分はアメリカの医師国家試験(USMLE)合格のため、図書館でひたすら問題集を解き続ける必要があったのですが、勉強しながらこの時間が自分の英語コミュニケーション能力に何も役に立っておらず、せっかく素晴らしい環境にいながらそのチャンスを無駄にしているような感覚があり、勉強しながら強いフラストレーションを感じていました。

外を知ることで改めて日本を見直す

USNHにいる間には、診療内容はもちろん、軍の医療保険システムや診療体制などシステムについても様々な違いを感じると思います。こうして気づいた違いを日本と比較することで日本やこれまでの自分の診療を違う角度から見直すことができると思います。「日本ってどうなんだ」と聞かれて、答えられない自分に気づくことで、自分ってあまり日本のこともよく分かっていなかったんだなぁ、と気づくことがあります。もちろん、USNHは海外でのキャリアを描く人の中継点のような役割が強いと思うのですが、そうでない人がここで働いたってきっととても面白いと思います。

労働条件について

基本的にはExternshipやOpen houseに参加し、現在働いているFellowから直接話を聞くのが一番だと思います。雇用条件は2018年度に大きく変わったのですが、今後も継続的に変更の可能性があり、すぐ情報は古くなると思います。自分の場合には収入は後期研修医として働いていたときと比較し、半額程度になり、経済的には非常に苦しかったのですが、自分が働いた2018年度は横須賀では休日のアルバイトが公式に認められていたので非常に助かりました。Japanese fellowには病院のそばに1人1室、寮の部屋が割り当てられており、非常に住みよかったです。Singleであればその寮に住み続けることができますが、もし家族同伴の場合は家族は基地内に住むことは許されていないので、外に住む必要があります。横須賀周辺の物件は米軍兵士をターゲットとして値段設定になっており、基本的に家賃は高いです。

注意すべきポイント

USNHで働くスタッフのほとんどが軍人なので、基本的には2-3年単位で移動していきます。なので、プログラムとしてはとても長い歴史があるのですが、人としての継続性はありません。その年の教育体制がどうか、ローテーションがどうかは、その時々の指導医や環境で変わってくると思います。Program directorが変わることで、システムが大きく変わるということもあり得ると思います。僕らの代は非常に教育的でコミュニケーションも積極的にとってくれるProgram directorで、本当に人に恵まれたと思っています。

まとめ

以上USNH Yokosuka Japanese Fellowship programの概要について実際に勤務した経験をもとに概要をまとめました。あくまでもこの記載は2018年度にJapanese Fellowとして働いた角田の個人的な意見や経験に基づいています。USNH公式の情報ではございませんし、Japanese Fellowを代表するものではありません。USNH Japanese Fellow Programに興味がある方はまずはExternshipあるいはOpen houseへの参加をしていただき、現在のFellowからお話を聞いて、考えてもらうのが良いと思います。

(2021年2月現在) 私たちの代でUSNH Japanese Fellow Programについて問題提起を行ったのですが、その後、後輩の先生方が改善のために努力をしてくれて、非常に見やすいウェブサイトが完成しています。実際の勤務のこと、労働環境のことなど詳しく、そして分かりやすく説明されています(このブログよりも情報が詰まっているかもしれません)。興味がある方は是非ご参照ください。

https://yokosuka.tricare.mil/About-Us/Fellowship-Program

この記載がUSNH Japanese programに興味があるものの、Applyに一歩踏み出せない方に対して、参考になる情報となることを祈っています。

-医師のキャリア

Copyright© 自分のあたまで考える , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.